第42話 05 毎日が繰り返しの人生
「なんで?」
腕を組みながら、気楽そうに問い返す。
「別に手伝う義理なんてないでしょ?」
「それよりも、もっと面白そうなことを探しに行きたいんだけど?」
彼女の言葉には、どこか子供じみた無邪気さと、ちょっとした悪戯心が混ざっていた。
少年はすぐには答えず、一瞬沈黙した。そして、口元にかすかな笑みを浮かべる。だが、それはどこか冷たい微笑だった。
「……手伝えば、もしかしたら得するかもしれないぞ?」
彼の声は低く、どこか誘うような響きを帯びていた。
「よく考えてみろよ。」
「もし、お前が俺を手伝って、俺が楽しくなったら……もしかして、俺の警戒心が緩むかもしれない。」
少年は横目でセレナを見ながら、さらに口角を上げる。
「そうすれば、お前が言ってた‘防御’がなくなるんじゃないか?」
「そうなったら、お前は簡単に俺の魔力を吸収できる。」
「お前にとっては、悪くない話だろ?」
そう言うと、少年は少し間を置き、淡々とした声で続ける。
「魔力を早く手に入れれば、こんな退屈な場所からすぐに出られる。」
「それに、俺も早く死ねる。」
「……つまり、Win-Winってことさ。」
彼の言葉は、あまりにも冷静で、淡々としていた。まるで、自分の運命をとっくに受け入れたかのように。
セレナはその言葉を聞き、一瞬まばたきをした。少し考えた後、ふっと微笑を浮かべる。
「……ふーん、悪くない取引かもね?」
肩を軽くすくめ、気楽そうに言う。
「まあ、いいけど。」
「ただし、あんまり期待しないでよ?」
彼女はくすっと笑いながら、冗談めいた口調で続けた。
「せいぜい、仕事中に横で‘がんばれー’って応援するくらいしかできないけどね。」
少年はその言葉を聞いた瞬間、思い切り眉をひそめた。口元が引きつる。
「……は?」
「お前、騎士団の応援部隊かよ?」
あまりにも適当な返答に、思わずツッコミを入れる。
セレナはただ、クスクスと笑うだけだった。
そのまま二人は歩みを進め、やがて屋台の前にたどり着いた。少年は静かに手を伸ばし、古びたカートを引き出す。
それは長年使い込まれたものだったが、手入れが行き届いており、綺麗に磨かれていた。彼の、唯一の生きるための道具。
少年はしばらくそれを見つめ、そして、小さく息を吐くと、静かに言った。
「さあ……始めるか。」
「このクソみたいな現実と戦いながら、毎日死に近づく。」
「曖昧な未来に約束を交わし、振り返れば愚かな記憶ばかり——。」
セレナはその言葉を聞くと、軽く眉を上げて微笑み、あっさりと突っ込んだ。
「……君って、詩人なの?」




