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10万pv突破しました!!!【每日更新】史上最強の幽霊剣士  作者: Doctor Crocodile


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第41話 17 「泣き虫な子犬も……なかなか可愛いわね」

彼女はまるで無邪気な少女のように、軽く首を傾げながら言った。しかし、その言葉の奥底には、どこか底知れぬ悪意と誘惑が渦巻いていた。


闇に漂う影のように、その未知なる存在は、触れた者を引き込む。抗うことのできない、圧倒的な吸引力を持って。


少年は、ぎゅっと拳を握りしめた。体は小さく震えていたが、それでも、逃げることはしなかった。


そして、彼ははっきりと頷いた。


「うん……そうだ。僕が、あなたを呼び出したんだ。」


その声は小さく、だが確固たる意思が宿っていた。


「あの……お願いがあります。」


少年は言葉を選びながら、一瞬目を伏せた。しかし、すぐに彼は意を決したように顔を上げる。


「……僕、聞いたことがあるんだ。あなたは、夢の中で人の魔力を奪うことができるって。」


「魔力をすべて失ったら、その人は死ぬんでしょう?」


少年の声は、どこか期待に満ちていた。しかし、その奥にはかすかな不安も混ざっていた。


「それなら、きっと……痛みはないよね?」


彼はまっすぐに彼女を見上げた。その瞳は揺るぎなく、まるで彼女の肯定を求めるように、切実に彼女の答えを待っていた。


「僕……そんな風に死にたいんだ。お願い……できる?」


「死にたいの?」


女が少年の言葉を聞いた瞬間、一瞬だけ驚いたように目を見開いた。だが、次の瞬間には、喉の奥から低く甘やかな笑い声を漏らしながら、楽しげに笑い出した。その声はまるで夜風に揺れる鈴の音のように心地よく、それでいてどこか背筋がぞくりとするような妖しさを帯びていた。


「面白い、これは本当に面白いわ……」


彼女はゆるりと瞳を細め、口元に浮かぶ微笑みはどこか曖昧で、目の奥には計り知れない光が揺らめいている。


「これまで私を召喚した者は、権力を求め、欲望に溺れ、禁じられた力に手を伸ばそうとする者ばかりだったわ……」


喉を鳴らすように笑いながら、彼女は少し首を傾げ、より一層興味深げに少年を見つめた。その瞳はまるで新たな遊び道具を見つけたかのように、好奇心と期待に輝いている。


「だけど……自ら死を望んで私を召喚した人間は、あなたが初めてよ。」


彼女はゆっくりとしゃがみ込んだ。滑らかに流れる黒いドレスの裾が、夜闇に咲く曼珠沙華のように美しく広がる。彼女はそっと顔を近づけ、少年の耳元に唇を寄せた。吐息がそよ風のように触れ、低く甘い囁きが彼の鼓膜を震わせる。


「ねぇ、坊や……さっきの言葉、とっても危険なことを言っているの、わかってる?」


彼女の声は、まるで柔らかな絹が肌を撫でるように滑らかで、そしてどこか艶やかだった。


「うっかり気を抜いたら……お姉さん、本当にあなたの魔力を全部吸い取っちゃうかもしれないわよ?」


語尾が微かに上がり、くすくすと笑いながら、彼の反応を楽しむように瞳を細める。


少年の肩がピクリと震えた。瞬間、全身が凍りついたかのように硬直する。背筋を冷たい電流が駆け抜け、心臓は胸の内で激しく脈打ち、今にも飛び出してしまいそうだった。それでも、彼は震える息を整え、必死に恐怖を飲み込むと、ゆっくりと後ずさった。


そして、彼女との距離をわずかに開けると、迷いのない瞳で彼女を見据えた。


「そんなに近づかないで。」


少年の声は微かに震えていたが、それでも確かな意志を宿していた。


「そうだよ、僕は死にに来たんだ。」


彼は小さく息を吸い込み、拳を握りしめながら強く言い切る。


「君なら、僕の願いを叶えてくれるの?」


一瞬の沈黙が降りる。


女はほんのわずかに目を見開いたが、すぐにふっと息を吐き、肩をすくめながら微笑んだ。その表情には、どこか困ったような、それでいて楽しんでいるような色が浮かんでいた。


「うーん、これはちょっと厄介なお願いね……」


彼女はしなやかな指先を顎に添え、まるでどうしたものかと考えるように小さく首を傾げる。


「残念だけど、今のあなたからは魔力を吸えないわ。」


目を瞬かせ、微笑みながら言葉を続ける。


「知ってる? 私が魔力を吸い取るには、ちょっとした条件があるの。」


彼女はゆっくりと身を寄せ、その琥珀色の瞳に少年の姿を映し込む。その声はまるで催眠をかけるかのように、じわじわと彼の思考を侵食していく。


「それはね……あなたが“この上なく幸福で、心から満たされている”状態であること。」


彼女の指先がそっと少年の顎を持ち上げる。冷たいのに、妙に滑らかな感触がした。


「でもね、今のあなたは——」


彼女は軽く頭を傾け、上から覗き込むように彼を見つめると、くすっと笑った。


「悲しそうな顔をしているわ。涙がこぼれそうな、まるで捨てられた子犬みたい。」


彼女はゆっくりと首を振り、まるで本当に残念そうにため息をつく。


「けれど……」


彼女は目を細め、唇の端を楽しげに吊り上げる。そして、指先をそっと少年の顎のラインに沿ってなぞった。


「泣き虫な子犬も……なかなか可愛いわね?」



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