第41話 14 永遠の眠り
彼の声がかすかに震えた。
指先が服の裾をきつく握りしめられ、その小さな手が白くこわばっている。
「事故のあと、両親は離婚した。」
「親権は母さんが持つことになったけど……彼女は僕を本当の意味で、息子だと思ったことはなかった。」
「母さんは……僕を憎んでいた。」
「彼女は、一度たりとも僕に微笑んだことがなかった。ただの一度も。僕を見つめる目には、いつも嫌悪と冷たさ、そして深い憎しみだけがあった。」
少年は俯き、声を小さく絞り出す。
「……母さんの気持ちは、分かるんだ。だって、僕のせいで……姉さんは死んでしまったんだから。」
「だから、僕は……この世界にいる資格なんてないんだと思った。」
夜風がそっと彼の髪を揺らす。
その華奢な肩が、街灯の下でひどく小さく見えた。
「僕は、探し始めたんだ……。自分が完全に消える方法を。」
「苦しみながら死ぬのは嫌だった。だから……」
彼は深く息を吸い、乾いた笑みを浮かべる。
「夢の中で人を殺せる悪魔がいるって聞いたんだ。」
「もし、それが本当なら……痛みもなく、楽に消えられるかもしれないって。」
「それで、必死になってその悪魔を召喚する方法を探した。ありとあらゆる本を調べて、禁忌とされている場所にもこっそり足を踏み入れた。ただ、召喚の魔法陣を見つけるために。」
少年の声が夜の闇に溶けるように響く。その語り口には、どこか自嘲的な響きがあった。
「まさか……本当に成功するとは思わなかったんだけど。」
彼は顔を上げる。その目には、戸惑いと、微かな震えが宿っていた。
「それでも、僕は……本当に、彼女を召喚してしまったんだ。」




