第41話 07 《琉璃色的誓言》
「……こいつ、俺、見覚えがあるな。」
サンディは騎士をじっと見つめながら、何かを考えるような口調でそう呟き、すぐにアリサの方へ振り向いた。
「ねえ……話すのはいいけど、その前に目の上の手をどけてくれない?何も見えないんだけど!」
エリーサは呆れたようにため息をつきながら、サンディに抗議した。
「まあ、どけてもいいけど……その代わり、さっきみたいにいやらしい目で彼を見つめるのは禁止な。」
サンディは少し不機嫌そうに言いながら、じわじわと言葉を選ぶような口調で続けた。
「は?」
エリーサは思わず眉をひそめ、口元を引きつらせた。「ちょっと待って、サンディ……もしかして——」
「違う!絶対に違う!」
サンディは即座に彼女の言葉を遮った。声の調子が妙に慌ただしく、顔もどことなく強張っている。
「お前が何を言ってるのか、まったくわからない!ただ単に、簡単に夢中になるなって言いたいだけだ!そう、それだけの話!」
必死に否定するものの、サンディの耳の先はわずかに赤く染まり、視線もどこか泳いでいる。
「へぇ?」
エリーサは目を細め、ニヤリと意味深な笑みを浮かべた。
そんな彼女の様子を無視するように、サンディは渋々手を離した。
ようやく視界が開けたアリサは、目の前の騎士の姿をしっかりと捉えることができた。
鋭い眉の下には、半分閉じられたような瞳。どこか気怠げで、すべてを見透かしているような冷静さを秘めている。
その眼差しは、細められた隙間から淡く光を放ち、深い湖の底のように静かで、謎めいていた。
肌は滑らかな陶器のように白く、無造作に流れる黒髪とのコントラストが際立っている。
高い鼻梁が彼の顔立ちに鋭さを加え、薄い唇がわずかに上がっている様子は、どこか気品と余裕を感じさせた。
「……わあ、本当にカッコいい……」
エリーサはぽかんと口を開け、素直に感嘆の声を漏らした。
その瞬間、サンディはギリッと歯を噛みしめ、小さく呟いた。
「やっぱり見せるんじゃなかった。」
次の瞬間、彼の手が再びアリサの目を覆った。
「ちょ、ちょっと!?」
エリーサは慌てて手を振り払おうとするが、サンディは意地でも離さない。
「サンディ、もしかして……やっぱり嫉妬してる?」
エリーサはクスクスと笑いながら、冗談めかして言った。「ねえ、どうしてそんなに必死なの?もしかして……私に同じように褒めてほしいとか?」
その瞬間、サンディの動きがピタリと止まった。
しばしの沈黙の後——
「……ああ、そうだ。」
「……え?」
「お前、俺のこともそうやって褒められるか?」
サンディはふっと笑い、じっとエリーサを見つめた。
その瞳の奥には、どこか挑発的な光が揺れていた。
エリーサは一瞬言葉を失い、思わず目を見開いた——。




