表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10万pv突破しました!!!【每日更新】史上最強の幽霊剣士  作者: Doctor Crocodile


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

636/1125

第41話 03 夢醒めの不安


「——!」


フィードは突然、目を見開いた。心臓が激しく鼓動し、息が乱れる。昨夜の恐怖がまだ体に染みついているかのようだった。ぼんやりとした意識が次第に現実へと戻っていく中、窓の隙間から差し込む朝の光が部屋を照らし、夜の残り香を静かに拭い去っていく。


しかし、完全に目覚める前に、聞き慣れた声が唐突に響いた。


「フィード、もう日が高いぞ! いつまで寝てるんだ?」


やや呆れたような調子の声に、フィードは反射的に顔を向けた。すると、目の前には――


「うわっ!」


思わず驚いて手を振り上げた瞬間、拳が相手の顔面を直撃してしまった。


「いってぇ! 俺、そんなに怖いかよ?!」


ナイトは鼻を押さえながら、傷ついたような表情でフィードを睨んだ。


「ご、ごめん! 急に目の前にいたから、びっくりして……!」


フィードは慌てて謝り、胸を押さえながら深呼吸をした。心を落ち着けたところで、ふとある疑問が頭をよぎる。


「……ニクスは? 近くにいるか?」


声には、焦りが滲んでいた。


昨夜の出来事が夢だったのか、それとも現実だったのかを確かめる必要があった。


「ニクス? いないよ。どっか行っちまったみたいだ。」


ナイトは肩をすくめ、特に気にする様子もない。


――やっぱり、夢と同じだ。


フィードの胸に、じわりと得体の知れない違和感が広がる。以前、彼は「無限ループ」に囚われた経験があった。現実と幻が絡み合い、抜け出せない悪夢のような時間。あの時の感覚が、今、ゆっくりと蘇り始めていた。


「……ナイト。」


フィードは深く息を吸い込み、できるだけ冷静さを保とうとした。しかし、声にはどうしても不安が滲んでしまう。


「俺、昨日の夜……夢を見ていたのか、それとも何か異変が起こっていたのか、分からないんだ……。」


彼は、昨夜の出来事を一つ残らずナイトに語った。あの異様な感触、人気のない部屋、そして最後に背後に立っていた「何か」の存在――すべてを。


ナイトは黙って話を聞いていたが、次第に表情から冗談めいた色が消え、思案するように眉を寄せた。


「……そうか。」


しばらく沈黙した後、ナイトは小さく頷いた。


「確かに妙だな。でも……今のところ、それが夢だったのか現実だったのか、はっきりした証拠はない。」


そう言うと、ナイトは軽くフィードの肩を叩き、柔らかい笑みを浮かべた。


「まあ、気になるなら俺も警戒するよ。他の連中にも注意するよう伝えておく。周囲を観察して、怪しい点がないか探ってみよう。」


フィードはしばし考え込み、やがてしっかりと頷いた。


「……俺はニクスを探してくる。」


彼の瞳には、不安と警戒の色が宿っていた。


「前回も、ニクスのおかげで勝利を掴めた……。でも今回は、また彼が突然姿を消した。どうしても嫌な予感がするんだ。」


胸の奥に渦巻く、拭いきれない不安。それを無視することはできなかった。


ナイトと別れたフィードは、すぐさま行動を開始した。そして、途中でシアと出会い、昨夜の奇妙な出来事を彼にも伝えた。


シアは話を聞き終えた後、眉をひそめ、顎に手を当てながら考え込んだ。


「……確かに、妙な話だな。」


しばらく沈黙した後、彼はゆっくりと視線を上げた。


「よし、俺も周囲を警戒してみる。情報を集めて、何か手がかりがないか探ってみよう。」


そう言いながら、シアはフィードの肩を軽く叩き、真剣な表情を浮かべた。


「もしまた誰かが消えたら、それは間違いなく俺たちを狙う何者かがいるってことだ。」


そう言うと、彼の口元に僅かな笑みが浮かんだ。


「――もしヤバい状況になったら、迷わず巨大ウサギになって暴れてやるさ。」


その瞬間、空気が一瞬止まったように感じられた。


フィードは言葉を失い、思わずシアを見つめる。真剣な表情で宣言する彼を前に、脳裏には巨大なウサギが暴れ回る光景が浮かび――


「……うん。」


フィードは、何とも言えない表情を浮かべながら頷いた。


昨夜の出来事が、ただの夢だったのか、それとも現実に起こった何かだったのか。


その答えはまだ分からない。


だが、朝日が昇った今でも、心の奥底に宿る不安は、決して消え去ることはなかった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ