第39話 最終章 「お前を完全に打ち砕く方法を思いついた!」
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「おや?どうやって解除したの?」
女は目を細め、不審とわずかな苛立ちを滲ませながら言った。「普通なら、私が解除しようと思わない限り……」
「黙れ。」
サンディが冷たく言い放ち、女の言葉を遮った。その声には否応の余地がなく、氷のように冷酷だった。魔法の杖の先端がしっかりと女の額に押し付けられ、微弱ながら致命的な魔力の波動が空気を張り詰めさせていた。
「今すぐ、お前が持っている“石”を出せ。石像になりたくなければ、私の言う通りにしろ。」
サンディの目は鋭く、揺るぎない決意が宿っていた。片手で魔法の杖を構え、もう一方の石化した腕は重たく垂れ下がり、まるで死そのもののように冷たかった。
同じ頃、牙の周辺にも緊張が走っていた。エイトとナイトは再び苦しげに立ち上がったが、彼らの体調は明らかに限界だった。毒素がまだ体内を巡り、まるで見えない鎖のように彼らの力と速度を縛り付けていた。先ほどの激痛で意識を取り戻したものの、代償として全身の力が完全に抜け落ちていた。
獠牙は彼らをじっと見つめ、口元に冷笑を浮かべた。軽蔑と興奮が入り混じった、捕食者のような目だった。
「へぇ……まさかお前たち、いきなり目が覚めたと思ったら、そんなに血を吐くとはな……」
ゆっくりと歩み寄りながら、獠牙は楽しげに言った。その視線は鋭く、まるで獲物をいたぶる蛇のようだった。
「なるほどな。お前たちが突然強くなった理由、やっぱり何かを服用したんだろう?特別な何かを。」
彼は一拍置き、笑みをさらに深めた。
「だが、そんな力が長続きするわけがない。そろそろ時間切れだろう?副作用が現れ始めたんだな?」
牙の声は蛇の舌のように冷たく、陰惨だった。目には狩人のような残酷さが宿っている。
「さっきまで確実に死ぬ運命だったお前たちが、今はただ絶望に足を取られているだけ……その状態で、俺を倒せるとでも思うのか?」
「口が減らないな。」
エイトが荒い息をつきながら、鋭い眼差しで獠牙を睨みつけた。目の奥に、消えない炎が燃えていた。
「誰が倒すなんて言った?石さえ奪えばそれで終わりだ。」
「ほう?」
牙は両腕を広げ、あえて無防備な姿勢をとった。それはまるで、挑発するような仕草だった。
「なら、やってみろよ。お前たちがどうやって俺から奪うつもりなのか、見せてもらおうじゃないか。」
しかし、エイトの手はかすかに震えていた。彼は歯を食いしばり、毒素と先ほど受けた攻撃の痛みに耐えていたが、まっすぐ立つことすらままならなかった。その様子を見た獠牙は、ますます嘲笑を深める。
「ハハハッ!この虫の息の姿、実に滑稽だな!」
洞窟中に響き渡る獠牙の笑い声は、骨の髄まで凍りつかせるような冷酷さだった。
一方、薬の副作用でかろうじて窮地を脱した三人とは対照的に、ザックの状況は最悪だった。突然の吐血で隙を晒した彼は、ボーディに一瞬の好機を与えてしまった。
「今だ!」
ボーディの目が鋭く光り、容赦なく手を繰り出す。一撃がザックの防御の腕を正確に捉えた。
「チッ……!」
強酸が皮膚を焼き、猛スピードでザックの腕を侵食し始めた。肉が焼ける音と、酸の蒸気が周囲に不気味に立ち込める。
ザックは歯を食いしばり、再び体を縮小させることでボーディの攻撃をかわそうとした。しかし、今回はボーディが先を読んでいた。
「ハッ!また同じ手が通用するとでも思ったか、クソ野郎が!」
ボーディは冷笑を浮かべ、強烈な蹴りを叩き込んだ。
ザックの体が空中で弧を描き、宙を舞った。彼は瞬時に防御力と肉体強度を最大限まで引き上げたが、それでも体は容赦なく洞窟の巨大な支柱に激突した。
「ドゴォン!」
石柱が無惨に砕け散り、崩れた岩がゴロゴロと洞窟内を転がった。天井がわずかに揺れ、細かな砂が舞い落ち、岩壁が不吉な音を立てた。
ザックは血まみれの口元を拭い、よろめきながらも立ち上がった。その眼光には、まだ消えない闘志が燃え盛っていた。しかし、ボーディはゆっくりと間合いを詰め、手に揺れる強酸を見せつけながら、不敵に微笑んでいた。
「さあ、終わりにしようか。」
空気が重苦しく張り詰め、まるで死神の鎌が頭上に垂れ下がっているようだった。命の糸が、いまにも断ち切られようとしている。
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