第39話 14 墜ちる剣、月に散る命
ナイトは空中で激しくもがき、四肢を無駄に振り回して、巨蛇の窒息しそうな咬みつきから脱しようとした。しかし、その牙は彼の肩に深く食い込み、鋭い痛みが一気に広がり、血が傷口から流れ出て、空中に幾筋かの真っ赤な弧を描いた。彼は蛇の牙が自分の筋肉を少しずつ貫いているのをはっきりと感じることができた。このままでは、あと少しで自分の体が引き裂かれてしまうだろう。
「落ち着け……何か手を打たなければ。」ナイトの頭は高速で回転していた。あの巨蛇は霧を体としているが、攻撃を仕掛けるたびに一時的に実体化する。実体化した瞬間に魔法で攻撃すれば、必ず再び霧に戻ることができる。そうすれば、この致命的な窮地から脱することができる。
決意を固めた奈トは歯を食いしばり、痛みに耐えながら両手で大剣をしっかりと握り、目に冷たい光を宿して剣先を巨蛇の赤い瞳に向けた。彼は渾身の力を込めて一撃を放ち、剣の軌跡が空中に眩しい光の軌跡を描いた。しかし、剣先が蛇の瞳に刺さる寸前、巨蛇は突然牙を緩め、体を素早く引いた。その動きには嘲笑さえ感じられた。支えを失った奈トは一瞬で空中から落下し、耳元で風が唸りを上げた。彼は無意識に再び剣を構えようとしたが、巨蛇が猛然と急降下してくるのを見た。その血走った大口はまるで死神のようだった。
ナイトは歯を食いしばり剣を振り下ろしたが、剣が蛇の体に当たる前に、蛇の尾が稲妻のように振り下ろされ、彼の剣を叩き飛ばした。その衝撃で彼の腕は痺れ、防御の態勢を取ることさえできなかった。そして、蛇の頭が容赦なく彼の胸に突き刺さり、その圧倒的な力で彼は気血が逆流し、体が急速に落下していく。
「まずい!」ナイトの心が引き締まった。彼は無理やり魔力を凝縮しようとしたが、巨蛇の体が瞬く間に濃い霧に変わり、暗い毒霧が幽霊のように彼の体を貫いた。彼は全身に震えが走り、その後、毒霧の一部が冷たい鎖に変わり、奈トを地面にしっかりと縛りつけた。動くことができない。空では、巨蛇の霧が再び集まり、巨大で冷たい剣に変わった。その暗闇の中に冷たい光が瞬き、ナイトの方向に一直線に落下してくる!
絶望の影が押し寄せてきた。死の淵に立たされたその時、一人の影がナイトの視界に飛び込んできた。エイトだ!
「ダメだ!お前には防げない!エイト、お前には魔法攻撃がない。ただの剣技だけだ!こんな攻撃は……」ナイトは叫び声を上げ、その声には焦りと恐怖が混じっていた。
エイトは振り向かず、その声は揺るぎない決意に満ちていた。「黙って、よく見てろ。」
奈トはまだ何か言おうとしたが、エイトに遮られた。
「俺が助けに来たんだから、静かに見てればいい。俺も漫画の主人公みたいにカッコいいシーンが欲しかったんだ!今がちょうどその時だろ?」エイトの口元には不敵な笑みが浮かび、その目は確信に満ちていた。
空から迫りくる巨剣はもうすぐそこまで来ていた。剣の先が触れるところでは、空気さえも切り裂かれるかのようだった。エイトは深く息を吸い込み、右手で長剣をしっかりと握り、体を少し沈めた。まるで弓の弦を引き絞るかのように。彼の剣技はまだ完全には会得していなかったが、今はもう後戻りはできない。
「月の剣法——円月!」
その瞬間、エイトの剣の勢いは夜空に浮かぶ満月のようで、完璧で鋭かった。彼の姿と剣の光が一体となり、眩しい銀色の光輪を描き、天から降り注ぐ死の剣に向かって斬りつけた!
その瞬間、時間が止まったかのようだった。ナイトの心臓は高鳴り、目には月の光のように輝く剣の閃光だけが映っていた——勝敗はどうあれ、この一撃は天地を揺るがすに違いない!




