第39話 03 闇の中の補助魔法。
「まさか……囮だったのか!」
撃ち抜かれたサンディは、ただの火魔法で作り出された幻影に過ぎなかったのだ。
ボーディがその事実に気づく間もなく、突然、背後から鋭い殺気が襲いかかる。全身が一瞬で緊張し、耳元をかすめる風の音と共に、馴染みのある武器の気配が迫る——重厚な大剣、そして煌めく二本の短剣。しかし、今回は今までとは違う——この一撃は、これまでのどの攻撃よりも鋭く、凄まじい威力を帯びていた。まるで空間そのものを切り裂くかのような圧倒的な殺意!
「まずはお前を吹っ飛ばしてやる!」
「聖剣瞬撃!」
「快刀月舞!」
エイトとナイトが同時に爆発的な気を放ち、渾身の技を繰り出す。剣光と刃の軌跡が交錯し、雷鳴の如き怒涛の斬撃が生まれる。その瞬間、側にいたザックが素早く反応し、魔法を詠唱——力強化魔法を発動させる!膨れ上がった魔力は荒れ狂う激流のように奔り、斬撃の威力を極限まで押し上げた。大気を震わせ、天地を切り裂くかのごとき一撃が、ボーディへと炸裂する!
「ドォォォン——!!」
今まで傷一つつかなかったボーディの身体が、ついに破壊的な攻撃を受け、猛然と吹き飛ばされた。まるで隕石のように空間を裂き、轟音と共に遠くの洞窟へと叩き込まれる。岩壁を砕き、土煙が舞い上がる。だが——ボーディは、それだけで倒れるような相手ではなかった。
誰もが勝負が決したかと思った瞬間、ボーディの右手が素早く動いた。粘り気を帯びた邪悪な強酸が疾風のように奔り、瞬く間に無防備なザックへと巻き付く!
「しまった!」
ザックは身動き一つできず、そのままボーディの腕に捕えられると、共に洞窟へと引きずり込まれ、砕け散る岩壁の向こうへと消えていった——深く暗い、漆黒の闇の奥へ。
エイトとナイトはすぐに駆け寄ろうとするが、次の瞬間、洞窟の周囲の空気が異様に重くなる。そして——濃密な毒気が荒れ狂う暴風のように渦を巻き、四方を埋め尽くしていった!
毒霧は瞬く間に変化し、巨大な毒蛇となって姿を現す。その身体は確かに毒の霧でできているはずなのに、まるで鋼鉄のように硬質でありながら、水のようにしなやかにうねる。幾重にも絡み合い、完全に退路を塞いでいく。
「お前たち三人……どこへ行こうというのか?」
毒霧の中から、冷酷な声が響いた。
「逃がしはしない……誰一人としてな。」
ボーディと共に漆黒の奈落のような洞窟へと激しく叩きつけられた瞬間、ザックは全身に鋭い痛みが走り、肺が圧迫されるような感覚に襲われた。まるで体中の骨が砕けたかのように、呼吸すらまともにできない。しかし、ここで倒れている時間はない。奥歯を噛み締め、必死に氷のように冷たい岩の地面に手をつき、何とか身体を起こす。
周囲を見回すと、深淵の闇が波のように押し寄せ、すべてを飲み込んでいた。ただ一箇所——遠くの洞窟の出口だけが、かすかな光を漏らしている。それはこの洞窟の唯一の脱出路であり、彼に残された最後の希望だった。
ザックは軋むような痛みに耐えながら、その微かな光へと向かって駆け出した。足元はふらつき、今にも崩れそうだったが、それでも止まるわけにはいかない!しかし、まさに洞窟の出口へ手が届きそうになったその瞬間——
背後から響く、低く荒々しい咆哮。
「遅い!」
「ドォォォン——!!」
大地が震え、岩が砕け散る。ボーディは獰猛な笑みを浮かべながら、拳を振り下ろした。その圧倒的な力が地面を引き裂き、岩盤を粉砕する。そして彼はすぐさま、巨大な岩石を掴み上げた。まるで小山を持ち上げるかのように筋肉が隆起し、そのまま凄まじい勢いで出口へと投げつけた!
ザックの瞳が驚愕に見開かれる。心臓が一瞬、止まったように感じた。
巨岩が唸るような轟音とともに飛来し、空気を裂く。回避する時間など、ほとんど残されていなかった。だが、彼は刹那の決断で歯を食いしばり、身体を投げ出すように地面に伏せた——氷のように冷たい岩肌を転がりながら、間一髪で致命的な一撃を回避した!
「ドガァァァン——!!」
巨石が洞窟の出口を直撃し、激しい衝撃が岩壁全体を震わせる。砕けた岩の破片が四方に弾け飛び、濃密な砂埃が視界を覆い尽くす。
その瞬間、唯一の光が完全に閉ざされた。
分厚い岩石が出口を覆い尽くし、あたりは完全な闇に包まれる。




