第38話 11 急速な身姿と漫画本
獣たちはゆっくりと近づき、密閉された包囲網を形成し、ナイトたち四人を完全に囲み込んでいた。
周囲の木々の葉が、茂みの中を移動する魔物たちによってかき乱され、不気味なざわめきを立てている。湿った血のような生臭い匂いが空気に漂い、まるで見えない巨大な手が心臓を握りしめるかのような圧迫感が四人を包み込んでいた。ナイトは素早く周囲を見渡し、魔物の数が予想以上に多いことを悟る。
「今は戦闘に魔力を消費している場合じゃない。できるだけ交戦を避けて、速やかに突破するしかない。」
エイトは冷静に言いながら、素早く腰に下げたポーチを開き、中に入っている漫画本の位置を確認した。きちんと収まっていることを確認すると、小さく頷く。
「どうやって突破する?」
ナイトは思考を巡らせながら問いかけ、その視線がザックへと向けられる。
その間にも、草むらに潜んでいた魔物たちが興奮し始め、鋭い爪で地面をかき乱し、枯葉の上を擦るような音が響き渡る。不安を掻き立てる音が徐々に大きくなる中、ナイトは迷うことなく剣を固く握りしめた。そして——
「——行くぞ!!」
大剣を高く振り上げ、そのまま地面へと振り下ろす!
「ドン!!!」
大地が震え、轟音とともに土煙が舞い上がった。まるで砂嵐のように巻き上がる砂塵が視界を覆い、周囲の魔物たちは一瞬、ナイトたちの姿を見失う。混乱した獣たちの怒りの唸り声が響く中——
「——ッ!」
煙の中から、疾風のような影が飛び出した。
エイトが双刀を抜き放ち、その鋭い瞳は獲物を捕らえた刃のように冷たい光を宿していた。
彼の動きは幽霊のように素早く、まるで舞い踊るように短刀を操る。銀色の刃が閃き、左手の短刀が一直線に魔物の頭蓋を貫く。鈍い音とともに魔物の身体が痙攣し、地面へと崩れ落ちた。その瞬間、エイトは次なる標的を捕捉する。
魔物が跳びかかろうとした瞬間、エイトの足が疾風のように閃く。
「ガンッ!」
鋭い蹴りが魔物の顎を打ち抜き、強烈な衝撃でその巨体が地面を転がる。
だが、戦いはまだ終わらない。前方からさらに二体の魔物が迫る——
エイトはためらうことなく、先ほど倒した魔物の頭に突き立てた短刀を引き抜き、猛禽のごとく空へと跳躍する。その姿は獲物を狙う鷹のように優雅で、だが異常なまでに速い。空中で身をひるがえし、目標を正確に捉えると——
「シュバッ!!」
一瞬の閃き。
鋭い刃が魔物たちの喉元を切り裂く。
「グギャッ——!」
鮮血が弧を描きながら噴き出し、二体の魔物は断末魔の叫びを上げる間もなく、その場に崩れ落ちた。




