第38話 07 「俺たちは、ずっと俺たちのままだ。」
本当の仲間とは、お互いを受け入れ、寄り添い合える存在だ。
この四人は、かつて世界に拒まれたかもしれない。
だが今、彼らは奇跡のような幸運に恵まれていた——広い世界の中で、こうして出会えたのだから。
空は次第に橙色へと染まり、木々の間をそよ風が優しく吹き抜ける。
葉が擦れ合う音が静寂の中に響き、四人は足を止めることなく、来た道をそのまま辿っていった。
落ち葉を踏みしめるたびに、小さな音が静かな森にこだました。
ナイトは歩きながら周囲を見回し、少し眉をひそめて口を開いた。
「ところでさ、どうやってあいつらを見つけるつもり? もうとっくに遠くへ行っちゃったんじゃないか?」
その声にはわずかに焦りが滲んでいた。
相手の足取りも方向も分からないまま闇雲に追っても、時間の無駄になるかもしれない。
ナイトの疑問を聞き、サンディは静かに口元を持ち上げると、自信に満ちた瞳で周囲を見渡した。
「それなら、俺に任せてくれ。」
そう言うと、彼女はゆっくりと手を上げ、掌に淡い青色の光を灯す。
指先に流れる魔力が、わずかに周囲の空気を震わせた。
「初級の探査魔法なら使えるんだ。高位魔法ほどの精度はないけど、足跡を辿るくらいなら問題ないさ。狼の群れを追ってたときも、この魔法を使ってたしな。」
そう言い終えると、彼は目を閉じ、意識を研ぎ澄ませるように静かに立ち尽くした。
魔力の感知が周囲に広がり、微かな痕跡を探し出そうとする。
しかし、敵の足取りを掴めたとしても、問題はまだ解決していない。
どうすれば、奪われた石を取り戻せるのか——
ザックは深く息を吐き、険しい表情で眉を寄せた。
低く落ち着いた声で、静かに言葉を紡ぐ。
「今、一番重要なのは……どうやってあの石を奪い返すか、だ。」
風が彼の髪を揺らし、淡い光に照らされたその瞳は鋭く光っていた。
「やつらの強さは、すでに知っているだろう? 前回は四対一だったのに、俺たちはほぼ壊滅状態だった。
もし今回も正面から挑んだら……石を取り返すどころか、俺たちの命すら危うい。」
彼の声音は冷静だったが、その奥に潜む焦燥は隠しきれなかった。
「じゃあ、どうすればいい?」
エイトは腕を組み、考え込むように目を伏せる。
しかし、次の瞬間、ふと顔を上げ、嬉々とした表情で自分の小さなバッグを叩いた。
「漫画を見れば何かヒントがあるかも! 探してみよう!」
目を輝かせ、すでにバッグの中を探り始めている。
ザックは呆れたようにため息をつき、軽く手を伸ばしてそれを制した。
「いや、いいって……どんだけ漫画に頼るんだよ、お前。」
エイトは不満げに口を尖らせたが、仕方なく漫画をしまう。
その時——
ザックが急に足を止め、歩きながらポケットからいくつかの小さなカプセルを取り出した。
赤や青、紫……それぞれ異なる色をしたそれらを指先で転がしながら、彼はわずかに口元を歪める。
「……成功するかは分からないけど、ひとつ可能性がある。」
慎重な声色だったが、その瞳には確かな決意が宿っていた。
「これは、以前俺が金を払って手に入れた薬のレシピだ。」
手の中のカプセルを軽く振り、微かに笑う。
その表情はどこか複雑だった。
「本来は、体力を回復させるためのものだったんだ。……だけどな。」
苦笑しながら、彼は小さく首を振った。
「当時の俺は、まだ調合の腕が未熟でな。結果、まったく逆の効果を持つものができちまった。」
カプセルを指で弾きながら、ザックの目が細められる。
「この薬を飲むと、体力は急速に消耗する。」
一瞬の沈黙——
「だが、それと引き換えに——」
風がそっと吹き抜ける。
「短時間だけど、魔力が爆発的に増幅する。」
ザックの低く響く声が、静まり返った夜の森に溶けていく。
彼の手のひらにある小さなカプセルに、三人の視線が自然と吸い寄せられた。
次の瞬間、まるで時が止まったかのような静寂が訪れる。
空気が張り詰める中、ザックはゆっくりと口を開いた——




