第38話 06 「一緒に頂点を目指そう!」
そう言い終えると、エイトは小さく息を吐き、バッグを軽く叩いた。
まるで、それが彼女なりの区切りの合図であるかのように。
ナイトはその様子をじっと見つめたあと、意味ありげに目を細め、笑った。
「へえ……珍しいな。エイトがそんなふうに素直になるなんて。」
彼の声には冗談めいた響きがあったが、その奥には驚きと喜びが滲んでいた。
エイトはちらりと彼を見て、肩をすくめる。
「だってさ、みんながここまで本音を話し始めるからさ。」
ナイトは少し驚いたように瞬きをし、それから、ふっと優しく笑った。
「……そうか。」
彼は夜空を仰ぎながら、ぽつりと呟く。
「どうやら、俺たち四人……本当に縁があるみたいだな。」
彼はゆっくりと仲間たちを見渡し、静かに言葉を紡ぐ。
「俺たちは、この世界に拒まれた者同士。」
焚き火の炎がゆらめき、彼の横顔を照らし出す。
その微笑みは、これまでよりも少しだけ強く、そして確かなものだった。
「他の奴らから見たら、きっと『特別な存在』なんだろう。」
ナイトは拳を握りしめ、じっと見つめた。
「だけど、それがどうした?」
その声は静かでありながら、夜の静寂を切り裂くほどの力強さを持っていた。
「俺たちは、俺たちなりのやり方で証明する。」
「生き方は一つじゃない。誰に否定されようと、俺たちは俺たちの道を行く。」
ナイトは、エイト、ザック、そしてサンディを順に見つめ、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「大事なのは、そんな俺たちを受け入れてくれる仲間がいるってことだ。」
彼は少し笑い、拳をぐっと握りしめる。
「そして今、俺たちはお互いを見つけた。」
エイトは少し目を見開き、ザックは静かに彼を見つめる。
サンディは、小さく息を呑んだ。
ナイトは拳を高く掲げ、熱のこもった声で叫ぶ。
「だったら——」
「このまま一緒に、頂点まで駆け上がろう!」
その拳は、迷いなく空へと伸ばされる。
エイトはその様子を見て、小さく笑った。
「……仕方ないな。」
彼女はゆっくりと拳を伸ばし、ナイトの拳にそっと重ねた。
ザックも、静かに拳を上げる。
三つの拳が、ひとつに重なる。
ナイトはサンディの方を向き、微笑む。
「どうした?お前も来いよ、相棒。」
その声は、どこまでも優しく、どこまでも温かかった。
サンディは、そっと肩を震わせる。
唇を噛み、目に滲んだ涙を堪えながら、震える声で言った。
「……君たちに出会えて、本当に良かった。」
彼は静かに拳を伸ばし——
四人の拳が、ひとつに重なる。
この瞬間、彼らは確かに繋がった。
世界に理解されなかった四人が、今、互いを理解し合う。
運命か、ただの偶然か。
そんなことは、もうどうでもいい。
彼らは——
本当の仲間になった。




