第38話 05 「信じることと受け入れること。」
微風がそよそよと吹き抜け、陽の光が四人の顔を優しく照らしていた。
この瞬間、空気が不思議なほどに澄み渡り、奇妙な静けさが場を包み込む。
誰もが胸の内を隠すことなく、ありのままの想いを語り始めていた。
エイトはそっと手元の漫画を閉じ、それを大切に小さなバッグへと仕舞う。
そして、目の前の仲間たちを見つめ、口元に淡い微笑を浮かべた。
「なんだか……急にみんな、テンション上がってるね。」
その声には、どこか揶揄するような軽やかさがあったが、不思議と冷たさはなかった。
むしろ、言葉の奥には微かに温もりが滲んでいた。
「まあ……でも、言ってることは間違ってないかもね。」
エイトはふと視線を落とし、指先を軽く擦るようにしてから、静かに言葉を継ぐ。
「実はさ、私も前にいくつかのチームに入ったことがあるんだ。」
彼女の声には淡々とした響きがあったが、どこか遠い記憶を辿るような微かな翳りも含まれていた。
「でも、みんな口を揃えて言ったんだよね。『漫画なんてガキっぽい』って。」
エイトは小さく笑った。その笑みはどこか寂しげで、ほんの少しの諦めが滲んでいた。
「……彼らには、漫画の魅力なんて分からないんだよ。」
ぽつりと呟くその声は、まるで風に溶けてしまいそうなほど静かだった。
「まあ、正直言うと……たぶん、みんなもあまり分かってないでしょ?」
彼女は軽く肩をすくめ、わずかに目を伏せる。
しかし、次の瞬間、少しだけ笑みを深めながらこう続けた。
「それでも、少なくともバカにしたりはしなかったよね。」
そう言いながら、彼女は肩にかけたバッグのストラップをそっと握りしめる。
その仕草は、ほんのわずかながらも安心感を表していた。
「……この気持ち、うまく言葉にできないけど……」
彼女はゆっくりと顔を上げ、奈特を見つめる。
「でも、もしかしたら……ナイトの言う通りなのかもしれないね。」
「みんなといると、すごく心地いい。」
彼女の言葉はまるで微風のように優しく、しかし確かな想いが込められていた。
「好きな時に好きなだけ漫画を読める。誰にも文句を言われない。耳元でブツブツと文句を言う鬱陶しいやつもいない。」
エイトはくすっと笑い、どこか軽やかな口調で続ける。
「それだけで、もう十分。」
炎が揺れ、彼女の瞳に淡い光を映し出す。
彼女は瞬きをひとつして、静かに言った。
「……まだ数日しか一緒にいないけどね。」
「でも、不思議と……君たちのことは嫌いじゃない。」




