第37話 最終章 私の石が……ない……たぶん
「何を言ってるんだ?これはお前のせいじゃないだろう。それに、今のお前は俺たちの仲間だ。たとえ一時的だったとしてもな。仲間を助けるのは当たり前のことだろ?」
ザックはサンディを慰めながら、地図をじっくりと確認した。
「よし、さっさと出発しよう。」
エイトは漫画を閉じ、数人はすぐに王都の方向へと歩き出した。しかし、なぜかサンディの胸には拭いきれない不安が渦巻いていた。
「罠を仕掛けておくのはどうだ?」
突然、ザックが提案した。「もし追跡してきたやつらが罠にかかれば、少しでも足止めできるかもしれない。それに、罠が発動すれば、俺たちもすぐに敵の位置を把握できるだろう。」
「でも、今そんなことをしている時間はないだろ?」エイトは即座に反論した。「それに、あいつらの実力を考えれば、罠に引っかかるなんてありえないんじゃないか?」
「確かに……なんだかさっきから頭が混乱しているな。」ザックは頭をかきながら苦笑した。「まあ、ぐずぐずしてる暇はない。行くぞ。」
そう言って、全員が再び歩き出そうとしたその時、サンディの顔色が突然険しくなった。彼女は焦った様子で身の回りを探し回っている。
「そんなはずは……そんなこと、ありえない……」
彼女は小さく呟きながら、どんどん表情を強張らせていった。
「どうした?何かあったのか?」ナイトが眉をひそめ、疑問の声を上げた。
その瞬間、ザックの胸中に広がる不安が一気に頂点に達した。背中を冷たい汗が伝い、得体の知れない恐怖が心臓を締め付ける。サンディが口にする言葉が、自分の最悪の予感と一致してしまうのではないか。
そして――サンディが、ついに声を震わせながら告げた。
「……私の石が……ない……たぶん、あいつらに奪われた……」
ザックの瞳孔が一瞬で広がり、全身が固まった。視線が虚ろになり、思考が一瞬で凍りつく。
――やはり、最悪の事態が現実になってしまった。




