第37話 15ごめんなさい。全部私のせいです
冷たい風が草木の生臭さをまといながら森の中を吹き抜け、疲れ果てた四人の体を撫でていく。ついに、ようやく逃げ出すことができた。ザックはナイトの最後の包帯を巻きながら、低い声で言った。
「治療が終わったら、すぐに出発しなければならない。安全な町を見つけるんだ。」
幸運なことに、混乱の中で逃げる前にザックは地図をちらりと見ていた。そして、彼らが進んでいる方向はまさに王都へと続く道だった。あそこには、最も頑丈な城壁、最も厳重な防御がある。彼らが考えうる中で、最も安全な避難場所だった。
「王都に着いたら、まずナイトを病院に運び、傷をしっかり治療してもらう。その後、この襲撃のことを対応できる人たちに報告して、どう対処するのかを見極めよう。」
ザックの言葉には、力強い決意が込められていた。
だが、彼が言い終わるか終わらないかのうちに、エイトはすでにポケットから漫画を取り出し、ページをめくり始めていた。
「ようやく終わったな……さて、漫画の時間だ。」
まるでさっきの逃亡劇などなかったかのように、平然と言い放つ。
ザックの眉がピクリと動き、信じられないというようにエイトを見つめた。
「こんな時に漫画を読むだと!?お前のメンタルの強さには本当に感心するよ……」
「漫画はいつ読んだっていいさ。」エイトは顔を上げずに、気楽にページをめくる。「時間があれば、それでいい。」
空気にはまだ血と焦げたような匂いが漂っている。サンディは静かに治療魔法の詠唱を続け、指先に淡い光を灯しながら、ナイトの傷口に優しく降り注いでいた。しばらくすると、ナイトの睫毛がかすかに震え、次の瞬間、彼は突然目を見開いた。
「……あの男は?まだいるのか!?」
荒い息をつきながら、ナイトの額には冷や汗が滲んでいた。最後の記憶は、自分があの男に捕らえられた瞬間で止まっている。その恐怖が鮮明によみがえり、心臓が無意識に早鐘を打った。
ザックはナイトの肩に手を置き、低く落ち着いた声で言った。
「もう逃げ出したよ。でも、やつらがいつまた襲ってくるかわからない。常に警戒を怠るな。そして、絶対にもう戦うな……力の差がありすぎる。」
ナイトが目を覚ましたことに気づき、サンディはようやく胸をなでおろした。
「よし、ザックの言う通り、すぐに王都へ向かおう。」
エイトは漫画を閉じ、珍しく真剣な声を出した。
「これ以上時間を無駄にしたら、追いつかれて本当に全滅しかねない。」
サンディはナイトを心配そうに見つめながら、問いかけた。
「でも、ナイトの体は……今の傷の状態で動けるの?走れる?」
ナイトは軽く腕を振り、笑みを浮かべた。
「問題ないさ。サンディが治療してくれたおかげで、もう大したことはない。残りはただの擦り傷みたいなもんだ。時間を無駄にしてる場合じゃない、早く行こう。」
そう言って、彼が一歩踏み出したその時、サンディが突然足を止め、俯いた。小さく震える声で、言葉を紡ぐ。
「……出発する前に、一つだけ言わせて。」
皆が彼女の方を振り返る。
サンディはぎゅっと拳を握りしめ、悔しさに滲んだ瞳を伏せた。
「……ごめんなさい。私のせいで、奴らが来たんだ……」
沈黙が訪れた。森の中には、ただ冷たい風の音だけが静かに響いていた。




