第37話 10 復活
ザックは深く息を吸い込み、ゆっくりと戦場を見渡した。先ほどの敵はすでに倒れ、硝煙はまだ消えず、空気には戦いの余韻が漂っている。彼は拳を握りしめ、心の中で静かに問いかけた。
——これで最初の敵は片付いたはずだよな?
彼はわずかに顔を傾け、まだ立っている二人の敵を見やる。しかし、そこにあったのは警戒でも怒りでもなく、まったく予想外の光景だった。
……まさかのピクニック?!
ザックの眉がピクリと跳ね上がる。目の前の状況がまったく理解できない。
「おい、姉貴、もう少しゆっくり食えよ! もともと全部お前のもんだろ? 俺が横取りするみたいな空気出すなよ!」
牙は眉をひそめ、目の前で貪るように食事をする女を呆れたように見つめた。
しかし、彼がそれ以上に気になったのは別のことだった。
「つーか、お前なんでそんなに食ってるのに、全然太らねぇんだ?」
牙は彼女の体をじっと見つめ、納得できない表情を浮かべる。
女はクスリと笑いながら、口いっぱいに食べ物を詰め込んだまま答える。
「ふふん、それがね、"姉貴"である私の秘密ってわけよ。知りたい? うん、いいよ、たった五千回土下座すれば教えてあげる♪」
牙はピクリと口元を引きつらせ、即座に手を振った。
「やめとくわ。そんなもんに興味ねぇ。」
ザックはこの呑気すぎる会話を聞いているうちに、怒りが込み上げてきた。彼は一歩踏み出し、声を張り上げる。
「お前ら、なんでそんなに呑気なんだよ?! 俺たちはもうお前らの中で最強のやつを倒したんだぞ! 大人しく降参しろ!」
しかし、女は口元を歪め、面白そうに笑った。
「最強? 誰のこと?」
彼女はゆっくりと手を伸ばし、倒れ伏している男を指差した。
「もしかして、この子のこと? ぷっ、アハハハ!」
彼女は大声で笑い始め、心底バカにしたような表情を浮かべる。
「違う違う! あいつは私たちの中で"最弱"だよ? だって、年齢が一番下なんだもん♪ もし本当に最強を知りたいなら……もちろん、この"姉貴"である私に決まってるでしょ!」
彼女は誇らしげに胸を叩き、自信と傲慢さに満ちた目でザックを見下ろした。
その時——
低く、不気味な声が静寂を引き裂いた。
「お前ら二人……バカか? ボーディ、お前、いつまで死んだフリしてんだ?」
その瞬間、ザックたちの顔が一瞬にして青ざめた。
——そんなはずはない! アイツは確かに……
風に乗って煙が晴れ、ゆっくりとその巨大な影が姿を現す。
ボーディが、傷一つないままそこに立っていた。
彼は余裕の笑みを浮かべ、まるで何事もなかったかのように言う。
「いやぁ、さっきの攻撃はちょっと驚いたよ。おかげで、大事な服が破れるかと思っちゃった。」
彼は自分の服を軽く払うと、くすくすと笑った。
「これさ、姉貴と兄貴がくれたんだ。すっごく大事なやつなんだよねぇ? だから、壊されなくて本当に良かったよ♪」
——まさか、あの一撃がまったく効いていなかったのか?!
ナイトの目は驚愕に見開かれ、信じられない思いでザック、サンディ、そして吹き飛ばされたエイトへと視線を向けた。
——そんなバカな……!




