第37話 08 聖光(せいこう)
ナイトの心臓は激しく鼓動し、額から汗が滴り落ちる。しかし、彼の顔には恐怖とともに揺るぎない決意の光が宿っていた。空気には腐食されたものが焦げるような臭いが漂い、周囲の草木は飛び散った強酸によって枯れ果て、地面には深い穴が穿たれていた。その地獄の中心に立つボーディは、まるで無敵の悪魔のように冷徹かつ自信に満ちた視線をナイトへと向けていた。
「お前の骨はいったい何でできているんだ……?」ナイトは歯を食いしばりながら言った。彼の手に握られた大剣はすでにボロボロに砕け、強酸によって深い溝が刻まれていた。もはや剣の刃は光を反射することすらできない。彼は理解していた——通常の攻撃ではボーディの防御を突破することなど到底不可能であり、ましてや傷をつけることなど夢のまた夢だと。
だが——それでも、彼は退くわけにはいかなかった。
「ナイト、気をつけろ!」アイットの警告が横から響いた。しかし、その瞬間にはすでに遅かった。——ボーディの姿が突如として消えたかと思うと、次の瞬間、強酸に覆われた手がナイトの顔面へと猛然と迫っていた!
ナイトの瞳孔が収縮する。彼はすぐさま身を翻したが、ボーディの動きはあまりにも速い——!続けざまに重い拳が彼の胸に炸裂した!
ドン——!
ナイトの身体はまるで糸の切れた凧のように吹き飛ばされた。胸元の服は瞬く間に溶け去り、肌には無惨な火傷のような傷痕が刻まれた。焼けるような激痛が全身を駆け巡る。
それでも、彼は歯を食いしばり、痛みを堪えながら立ち上がろうとした。だが、ボーディの猛攻はまだ終わっていなかった。
ナイトがなんとか体勢を立て直したその刹那、ボーディの姿が一瞬揺らめく——気づいたときには、すでに彼の背後にいた!
「くそっ——!」
ナイトが反射的に振り返る。だが、その動きを見透かしていたかのように、雷光のごとき拳が彼の背中に炸裂した!
ドゴォォン——!
凄まじい衝撃が背中に叩き込まれる。服はズタズタに裂け、肌は灼熱の痛みに焼かれるように腐食されていく。ナイトは再び吹き飛ばされ、何本もの太い木をへし折りながら地面を転がった。口元から血が滴る。
それでも——彼は倒れない。
そのとき、ボーディが止めを刺そうと前進した瞬間、アイットが上空から急降下した!
両手に握る短剣を閃かせ、一直線にボーディの首筋を狙う!
キィィン——!
だが——異常な光景が広がった。
短剣の刃がボーディの肌に触れた瞬間、まるで氷が炎に溶かされるように、一瞬で消滅したのだ。刃は皮膚に到達するどころか、その手前で完全に溶解し、空気の中へと消えてしまった。
アイットの瞳がわずかに揺らぐ。
その一瞬の隙を逃さず、ボーディが不気味な笑みを浮かべながら振り返る。
狂暴な腐食液をまとった掌が、アイットに向かって凄まじい勢いで叩きつけられた!
ブシャッ!
高濃度の強酸が飛び散る。空中にいたアイットは避ける隙すらなく、咄嗟に身を縮めるが、それでも液体の一部が肌を焼いた。
ジュゥゥゥ……!
激しい焼ける痛みが彼女の体を襲う。アイットは歯を食いしばり、冷や汗を流しながらも耐え抜いた。
しかし、ボーディの攻撃はまだ終わっていなかった。
次の瞬間、まるで影のように素早く接近し、鋭い蹴りをアイットの顔面に向けて振り下ろした!
アイットは即座に予備の短剣を抜き、蹴りを受け止めようとする。
ガァンッ!
剣が強酸を防いだものの、衝撃はとどまることを知らず、彼女の体はまるで砲弾のように吹き飛ばされた。
ズドン——!
彼女は遠くの樹木に激突し、鈍い衝撃音が辺りに響く。




