第36話 16 「悔いのない」
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「まったく、今度は俺がこの二人のバカの面倒を見る番かよ。」ザックは微笑みながら言った。「でも、なんだか悪い気はしないな。」
夜も更け、エイトとサンディはテントの中で眠りについた。ザックは外に座り、空を見上げていた。そこへナイトがやってきて、そっと隣に腰を下ろした。
「大丈夫か?なんだか悩み事があるように見えるけど。」ナイトが問いかける。
「ああ、別に。」ザックは首を振り、薄く笑った。「ただ昔のことを少し思い出していただけだよ。実際、俺なんて戦いではあまり役に立たないし、お前らに頼りっぱなしだ。」
「そんなことないって。ザック、お前はすごく役に立ってるよ。」ナイトは真剣な表情で言った。「頭も切れるし、しかもお前みたいなタイプの人……なんて言うか、俺は好きだな。お前と話してるとすごく楽なんだ。」
ザックは眉を上げた。「おや、それは褒めてるのか?」
ナイトは軽く笑い、話を続けた。「実はな、俺も昔は他のチームに溶け込もうとしたことがあるんだ。でも、彼らと話すとどうしても緊張しちゃって、まるで自分らしくいられない気がしてな。それに、彼らのやり方や振る舞いはどうにも馴染めなくて、だからこそ俺は自分のスタイルで冒険するほうが好きなんだ。俺にとって本当の自由って、好きなことをやるだけじゃなくて、嫌なことを断れることだと思ってる。」
少し間を置いてから、ナイトはザックに視線を向けた。「お前もそうだよ。他人の目なんて気にする必要はない。お前が思う最大限を発揮すればそれでいいんだ。正直言って、お前の実力が劣ってるなんて思ったことはないよ。天賦の才に差はあるかもしれないけど、努力して最善を尽くせば、きっと後悔なんてしないはずだ。俺の人生の目標はな、死ぬ間際に『本当に最高の人生だった』って胸を張って言えることなんだよ。」
ナイトの話を聞き終えたザックは、しばらく呆然としていたが、やがて笑い出した。「おいおい、今日はやけに哲学者みたいなことを言うじゃないか。普段からそれくらい賢そうにしてくれたら、俺ももっと楽なんだけどな。……でも、必要とされるって、なんか新鮮な気分だな。」
「当たり前だろ。俺たちにとってお前は欠かせない存在なんだから!」ナイトは当然のように言った。「だって、俺もエイトも計画なんて苦手だからさ。俺たちみたいな特別な奴らが集まったチームって、面白いだろ?前にも言ったけど、俺は冒険が好きなんだ。ただ、冒険って宝箱や迷宮だけじゃないんだよ。人と人との関係もまた、立派な冒険だと思うんだ。」
ザックは再び空を見上げ、深い星空を眺めながら、口元に微笑みを浮かべた。




