第6話11ビッグバン
轟音が大気を引き裂いた。
リードの巨大な剣が火焰を纏った怪物へと振り下ろされる。しかし——
「遅い。」
カニディはわずかに目を細めた後、手首を軽く返すだけで、その重厚な一撃を片手で受け止めた。
——まるで、ただの小枝を折るかのように。
ガキィィィンッ!!!
刃と掌がぶつかる瞬間、周囲に衝撃波が走り、地面がえぐれる。
だが、カニディは微動だにしない。
そのままの勢いで、リードの身体へと鋭く左足を振り抜く。
「消えろ。」
——ドゴォッ!!!!
強烈な蹴撃がリードの腹部に炸裂した。
その瞬間、空気が爆ぜるような音を立て、リードの体は矢のように吹き飛ばされる。
壁が近づく。
——いや、リード自身が壁に向かって飛んでいるのだ。
——ズガァァンッ!!!!
石造りの建物の壁に、リードの体が猛烈な勢いで激突する。
硬い壁が悲鳴を上げるように粉々に砕け、土煙が巻き上がった。
崩れ落ちる瓦礫の隙間から、横たわるニクスの姿が見えた。
「ニックス!ニックス!早く起きて!」
ぼんやりとした意識の中——
遠くから聞こえる声が、ゆっくりと輪郭を帯びてくる。
「……う、ん……?」
瞼をゆっくりと開けると、目の前にはリードが立っていた。
「……俺、気を失っていたのか?」
ニクスは痛む頭を押さえながら、辺りを見回す。
「さっきの攻撃……速すぎて、何も見えなかった……」
そう呟きながら視線を巡らせると——
その視線の先、炎の王が悠然と佇んでいた。
「……あいつは?」
「前だ。だけど、そんなことを気にしてる場合じゃない。」
リードは剣を杖のようにして立ち上がり、険しい表情で続ける。
「とにかく、早く逃げろ! 村長が戻るまで持ちこたえないと……!」
「ハハハハハッ!!!」
突如として響く、耳障りな嘲笑。
「お前たち……本当に甘いな。」
炎の王、カニディが肩を揺らしながら笑いを漏らす。
「本気で村長が戻るまで耐えられると思ってるのか?」
カニディは一歩前に進むたびに、地面が熱で焼き焦がされていく。
「仮に奴が戻ってきたとして……そこで目にするのは何だ?」
カニディの目が細く歪み、悪意の光を宿す。
「死体の山と、燃え盛る地獄の光景だ。」
——まるで、すでにその未来が決まっているかのように。
「楽しみだなぁ……奴がどんな顔をするのか。」
カニディはニヤリと笑い、焦げるような熱気を放ちながら言い放った。
「俺はあいつに、自分の苦しみを……思い知らせてやる。」
「黙れ!!!」
怒りに燃える叫びが、戦場に響き渡る。
リードは剣を構え、刃先にまばゆい光を灯す。
——渾身の一撃。
振り下ろされるその瞬間、刃が周囲の空気を震わせ、輝きを増していく。
だが——
「——だから言っただろう?」
カニディは軽く身を翻し、リードの攻撃をまるで風を避けるかのように躱す。
そして、淡々とした口調で呟いた。
「お前は甘い。」
「甘い……だと?」
その言葉が終わるや否や——
カニディが左腕を振り上げる。
轟音とともに、炎を纏った拳が振り下ろされようとした、その瞬間——
——シュバッ!!
突如、横から駆け抜ける影。
ニクスが、獣のような俊敏さでカニディへと突進する。
——流れるような剣閃。
その軌跡はまるで、美しい円舞曲のようだった。
「——喰らえっ!!」
ニクスの刃がカニディの胴を捉える。
——ガギンッ!!!!
——だが。
刃が弾かれる。
ニクスは愕然とした。
「……こいつ、体が硬すぎる……!」
「まだ動けるのか?」
カニディはまるで、興味深そうにニクスを見下ろした。
「それなら……」
その言葉とともに、
——炎が、爆発する。
カニディの身体から、業火の波動が奔る。
その瞬間、まるで大爆発が起こったかのように、凄まじい熱風が四方へと解き放たれた。




