第36話 02 空気が静まり返り
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「あの……こんにちは、貼ってあった募集のポスターを見て来た冒険者です。」ザックは少し緊張しながら言った。
「やった!俺のポスター、絶対誰か反応してくれると思ってたんだ!」ナイトは興奮して言った。
「はいはい、ナイト。募集のことは任せるよ。俺は漫画を読むのに忙しいんだ。」隣のエイトがだらしなく言った。
ナイトは不満そうにエイトの頭を軽く叩きながら、「ちゃんとしろよ!今は人員を募集してる最中なんだぞ!」と言った。
「ごめん、こんな様子を見せちゃってね。」ナイトは苦笑しつつも、再び明るくなって、「でも君が来てくれて本当に嬉しいよ!見たところ、君は魔法使いだよね?ハハ、ちょうど魔法使いを探してたんだ!」と話を続けた。
「えっと……実は、俺、正規の魔法使いってわけじゃないんです。」ザックはうつむきながら、少し恥ずかしそうに言った。「俺の魔法、ちょっと変わってて、自分でもよく分かってないんです。それに……多くの場合、大した効果もないんです。」
「じゃあ、見せてくれよ。君の魔法がどんなものか見てみたい。」エイトは漫画を置き、興味を示した。
「分かりました。」ザックは頷き、ポケットから木製のおもちゃの球を取り出し、机の上に置いた。「俺の魔法は簡単に言えば、物質をコントロールするものです。聞こえは強そうですけど、実際には強化魔法で、物を大きくしたり小さくしたり、速度を上げたり、力を強くしたりする感じです。」
「それ、めちゃくちゃ強そうじゃないか!」ナイトは興奮気味に言った。「もし俺の防御力とか力を強化できたら、討伐クエストなんて楽勝になるじゃないか!」
「そんなに簡単に喜ぶなよ。」エイトは冷静に言った。「そんなに強い魔法が使えるやつが、こんなチームに来ると思うか?で、ザック、お前の強化ってどれくらいできるんだ?」
ザックは深呼吸し、両手を木の球に乗せた。「それじゃ、試してみます。」彼は目を閉じ、魔力を木の球に注ぎ始めた。
しかし、木の球は最初全く変化しなかった。
「俺の目の錯覚か?」ナイトが不思議そうに言った。
「いえ、まだ発動してないだけです……」ザックは緊張しながら答えた。
魔力が注ぎ込まれると、木の球はようやく目に見える速度で大きくなり始めた。しかし、3秒もしないうちに成長は止まり、木の球はピンポン玉サイズから野球サイズになるだけだった。
その瞬間、空気が静まり返り、3人は顔を見合わせた。
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