表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/1065

第6話09バーニングクラウン!

リードは、膨大な魔力を凝縮した剣を高く振り上げ、その切っ先を燃え盛る火焰精霊へと叩きつけた。


——刹那。


剣が振り下ろされた瞬間、爆発的な衝撃が大気を震わせ、猛烈な煙と火花が四方に弾け飛んだ。轟音とともに視界は白煙に覆われ、熱気が肌を焼くように押し寄せる。


「……決まったか?」


リードは息を整えながら、煙の向こうに視線を凝らした。しかし、何かがおかしい——手応えがない。


——まるで、空を切ったかのような違和感。


焦燥感が胸を締め付ける。徐々に煙が晴れていくと、そこに現れたのは、先ほどまでの火焰精霊とはまるで別物の姿だった。


全身を紅蓮の鎧に包み、頭上には燃え盛る焰の冠。


それは、ただの精霊ではない——まるで炎を統べる王そのもの。威圧感が場を支配し、その佇まいには圧倒的な風格があった。


「……将軍、やはり油断していましたね?」


低く響く声が空気を震わせる。火焰精霊は冷ややかな視線をリードに向け、ゆっくりと歩み寄る。


「何度も忠告したはずです。"慎重に行動しろ"と。焦りすぎは禁物。そんな軽率な攻撃では、計画が台無しになってしまいますよ。」


リードは歯を食いしばりながら、その言葉をしっかりと受け止めた。


「……ご指摘、感謝します。」


その静かな声には、悔しさと、それ以上の覚悟が滲んでいた。


火焰精霊は満足げに頷くと、ふとリードの体に目を向ける。そして、まるで当然のように言った。


「あなた、負傷していますね。無理をするのはよくありません。少し休んでいてください。」


リードは言葉を失う。


——まるで、戦局を完全に支配している者の余裕。


火焰精霊は続けた。


「ここから先は、私が引き受けましょう。あなたはもう十分に戦いました。」


その言葉は、命令ではなく、確固たる意思の表れだった。


リードは一瞬、何かを言おうとしたが、結局、小さく息を吐いて頷いた。


「……ありがとうございます、大人。」


火焰精霊はゆっくりと振り返り、今度は真正面から敵を見据えた。


燃える瞳が獲物を捉え、冷酷な微笑を浮かべる。


「さあ——死ぬ覚悟はできているか?」


一歩踏み出すたび、地面が焼け焦げる。


「できているなら、今のうちに遺言でも考えておくといい。」


その言葉は、決して虚勢ではなかった。圧倒的な魔力が周囲に満ち、炎の気流が渦を巻く。


——この存在は"強者"だ。


それを本能で理解したニックスとリードの額に、冷たい汗が滲む。


あの一撃を受けながら、火焰精霊は傷一つ負っていない。それどころか、まるで何もなかったかのように悠然と立っている。


「……どうする、リード?」


ニックスが焦りを滲ませながら、かすれた声で問いかけた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ