第35話 07 私はこのままずっと「変わっている」ままでいたいと思う
ニックスは椅子に座り、頭の中が混乱していた。彼は小声で呟いた。「完全に混乱している……俺の未来は、あの人が言った通りになるのだろうか?」そう言いながら頭を振り、苦笑して自分に言い聞かせた。「そんなことはない。迷っているときには、必ず星が俺を導いてくれるから。」そう考えているうちに、彼はいつの間にか椅子の上で眠り込んでしまった。
どれほど時間が経ったのか分からない。耳元にそっと足音が聞こえ、ニックスはぼんやりと目を覚まし、振り返ると、星がそっと部屋を出ようとしているのが目に入った。
「ごめんね、起こしちゃった。静かに出て行こうと思ってたんだけど。」星は小さな声で言った。
「まったく、出て行くなら一声かけてよ!目が覚めて君がいないと分かったら、俺はすごく心配するんだから。」ニックスは目をこすりながら答えた。「ちょっと待って、フィードたちを呼んで君を迎えに来てもらうから。」
星は小さく頷き、再びベッドの端に腰掛けた。ほかの人が来るのを待ちながら、ふと疑問が浮かんだようで、彼女は口を開いた。「ニックス、夜はどうして幽霊の力を選んだの?」
「正確に言うと、その時は俺もよく分かっていなかった。」ニックスは答えた。「幽霊ってものは、本来能力として使うのがすごく難しいものらしい。たぶん、空間に関係する何かがあるみたいだけど、俺も詳しくは知らない。ただ、幽霊の力はきっと強いだろうと思って、それで選んだんだ。そして結果的にその力を得られたんだ。」
「幽霊って付き合いやすいの?怖くないの?」星の瞳は好奇心で輝いていた。
「最初はね、こいつは完全に反社会的な性格だと思ったよ。」ニックスは眉をひそめて言った。「しかもすごく傲慢で、礼儀知らずでね。」
ちょうどその時、ニックスの体内にいる幽霊がくすっと笑った。怒る様子もなく、むしろ楽しそうに言った。「ほらな、やっぱり俺のことを仲間だなんて思ってない。ただ力を強くするための道具扱いだ。」
「そんなことはないと思う!」横にいた精霊がすかさず口を挟んだ。
精霊の言葉に頷くように、ニックスは続けて言った。「でもね、長く一緒にいると分かってくるんだ。こいつ、時々なんだか言葉にできないけど、少し可愛く思える瞬間があるんだよな。傲慢だけど頭がいいし、無関心に見えても、大事な時にはちゃんと注意を促してくれる。だから俺は、幽霊がみんな凶悪な存在だとは思わない。少なくとも、俺と一緒に戦っているこの幽霊は、信頼できる仲間だよ。」
少し間を置いてから、彼は笑みを浮かべた。「もしかしたら、俺が変わっているのかもしれない。だって、多くの人は魔物は仲間になれないって言うから。でも、正しいことが『変わっている』と言われるなら、俺はこのまま変わっていようと思う。」




