第35話 04 「さあ、どうだろうな?」
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「さて、俺の漫画タイムが始まる時間だな。」エイトは笑いながら言った。
「漫画って、俺より大事なの?」ニックスは目を細め、少しからかうような口調で聞いた。
「どうだろうな……6対4ってとこかな。」エイトは冗談交じりに答えた。
「それで、俺はその多い方?それとも少ない方?」ニックスはさらに追及する。
病室の窓から陽光が差し込み、埃が光の中で自由に舞っていた。ベッド脇の仕切りカーテンは、白い布越しに微かな光を透かし、どこかぼんやりとした雰囲気を漂わせていた。エイトは病室の扉を開け、ニックスを一瞥して微笑むと、「さあ、どうだろうな?」と一言残し、扉をそっと閉めて部屋を後にした。
病室を出たエイトは、次にどの漫画を読もうかと考えながら廊下を歩いていた。その時、背後から聞き覚えのある声がした。
「えっと……ここにニックスっていう人、いますか?」
エイトは立ち止まり、振り返ると小Nの姿が目に入った。
「前に会ったあの女の子か?」と少し戸惑いながら近づくエイト。「また会ったな。ニクスに会いに来たんだよな?他の奴らはどうしたんだ?一緒じゃないのか?」
小Nはエイトに会うとは思っていなかったのか、驚いた表情を見せた。エイトが仮面をしているためその表情は見えなかったが、少ししてから彼女は小声で答えた。
「私はこっそり抜け出してきたんです。エリーサお姉さんたちは、明日ニクスに会いに来るって決めていて。みんなも休む必要があるって。でも私は……私は休む必要なんかなくて、ニックスが今どうなっているか確かめたくて。」
エイトは軽く頷き、「なるほどな。君とニックス、仲が良いんだな。だったら少し話してきなよ。あいつはなんでもできるように見せたがるけど、実際は結構繊細なところがある。まあ、人ってそういう複雑なものだよな。よし、俺は漫画を読みたいからこれで失礼するよ。ニックスの部屋は廊下の突き当りを左に曲がったところだ。日も暮れるし、帰りは気をつけるんだぞ。」
「ありがとうございます。」小Nはそう言うと、ニックスの部屋の扉の前に立ち、そっとノックした。
こんな時間に誰が来たのだろうか、とニックスは少し不思議に思った。きっと仲間が来たのだろうと考え、急いで髪を整え、目を大きく見開いて少しでも元気そうに見せようとした。
「入っていいよ。」ニックスがそう言うと、扉が開いた。しかし、そこに立っていたのは彼が想像していた人物ではなかった。
「小N?」




