第35話 03 ずっと一人では持たないよ
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病院の病室で、ニックスはベッドに横たわり、腕には点滴の管が刺さっていた。点滴の液体がゆっくりと落ち、滴る音はまるで時計の振り子のように規則正しい。ニックスは点滴をじっと見つめ、ふと自嘲気味に小声で呟いた。
「やっぱり俺ってバカだよな?」
「その通りだな。」
聞き覚えのある声が聞こえ、ニックスが驚いて振り向くと、そこにはエイトが立っていた。
「えっ!エイトか!」ニックスは目を丸くして言った。
エイトは歩み寄り、ニックスの額を指で弾いた。
「師匠と呼べ。」
「分かったよ、師匠エイト。」ニックスは笑いながら返事をした。そして少し間を置き、探るような口調で続けた。
「ここに来たってことは、俺の仲間たちに会ったんだろう?何か変わった奴に気づかなかったか?」
エイトはニクスを見つめ、ゆっくりとした口調で言った。
「仮面をつけた小さい女の子だろ?会ったよ。でも、前にも言ったよな、一度に薬を2錠飲むなって。本当に死ぬぞ。」エイトは少し不満そうに言った。
「仕方ないだろ、あの状況ではそうするしかなかったんだ。」ニックスは軽く笑って答えた。「でもほら、今こうして俺は無事だろ。」
エイトは何も言わず、ニックスの肋骨を指で軽くつついた。
「うわっ!痛い!ちょっと待て、痛いって!」ニックスは苦しそうに叫んだ。
「これが無事だっていうのか?」エイトは眉をひそめた。「もともと魔力が損傷している状態で、さらに戦闘をしたんだぞ。よく生きていられたもんだ。」
「どうだろう……多分、良い仲間が治療してくれたおかげかな。」ニクスは小声で答えた。
エイトは軽くため息をついた。「無理するなよ。お前は仲間たちに、自分の魔力がどれだけ酷く損傷しているか、まだ話してないだろ。」
「話す必要なんてない。」ニックスは首を振り、強い口調で言った。「俺は回復するさ。それに、このことで彼らに心配をかけたくない。ただ、俺がいる限り、俺たちは絶対に負けないって、そう思ってもらえればいいんだ。」
「でも、同じことがもう一度起きたら、今度こそお前は持たないぞ。」エイトは険しい顔で言った。
「大丈夫だよ。」ニックスは軽い調子で答えた。「俺は彼らを守る。仲間を誰一人傷つけさせたりしない。」
エイトはじっとニックスを見つめ、一瞬黙り込んだあと、わずかに笑みを浮かべた。
「お前、頑固だな。でも嫌いじゃない。隊長としては悪くない性格だな。仲間だって成長するんだ。毎回お前一人が最前線に立つ必要はないってことを、そろそろ理解しろよ。」
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