第33話 17 「狂気の代名詞」
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「はあ、ダメだな。やっと一人分吸収したばかりなのに。」男は低く呟き、次の瞬間、自嘲気味に笑い出した。「でも、大丈夫だ。本当に大丈夫さ、ハハハハハ!」左手を上げて自分の頬を撫で、揺れる瞳と不気味な笑みを浮かべた。
「死んだら魔力を吸収することはもうできないけど、でも奴らは――」男の声色が急に冷たくなった。「逃げられないさ。自分たちで作り上げた夢からは絶対に逃げられない。その夢の中では、俺が何をしようと俺の自由だ。」
狂気じみた笑い声が広がったが、それも突然止んだ。男の視線が左側を捉え、目つきが鋭く変わる。反射的に手に持った斧を振り、真っ白なウサギを一撃で斬り伏せた。地面に鮮血が飛び散り、小さな土の塊を赤く染めた。男は眉をひそめ、不機嫌そうに低く呟いた。「まったく、興が冷めるな。でも大丈夫……仕方がない、もう一人殺せば、また気が乗るかもしれないな。」
男は小さな扉を押し開け、暗闇の中へ足を踏み入れた。
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同じ頃、別の場所ではエリサと小Nが、ニックスの行方を懸命に探していた。
「小N、絶対に油断しないで!」エリーサは真剣な口調で言った。「敵がいつ急に襲ってくるかわからない。前に渡した信号弾、覚えている?敵に遭遇したらすぐ空に向かって打ち上げるのよ、わかった?」
「わかった。」小Nは力強く頷いた。エリーサは小Nの頭を軽く撫でると、再び周囲に残る魔力を探り始めた。
小Nは顔を上げ、狭い路地を見つめたあと、少し離れた高い屋根の上に目を向けた。「ここ、覚えてる……」小Nは小さく呟き、肩にかかっているコートを見下ろした。それはニックスのコートだった。柔らかくて、どこか温かい。記憶の断片が少しずつ形を成し、彼がそのときに言った言葉が頭に響いた。
「絶対に寝ちゃいけない。一度眠ったら……」
「エリーサ!エリーサ!」小Nは突然振り返り、思い出したことをエリサに伝えようとした。しかしその瞬間、影の中からゆっくりと歩み出てくる人影を見た。それは全身に包帯を巻いた男だった。足取りは重く遅いが、その体からは強烈な危険な気配が漂っていた。
「小N、無駄だよ……」男は低く掠れた声で言い、薄笑いを浮かべた。「もう、誰にも君の声は届かないんだ。」
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