第33話 15 消えた紫
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「冗談ではありません。本当に“ニックス”という人のことが思い出せません。」小Nは茫然とした表情で眉をひそめた。「それどころか……あなたたち二人の名前すらはっきりと思い出せない。確かにどこかで聞いたことがある気がするけど、どうしても思い出せないんだ。君たちの名前はなんだっけ?」
「そんなはずがない!」シャーは驚いた声で言った。「ニックスは僕たちの一番の友達だよ!」
「そうよ、こんなのどう考えてもおかしいわ。」そばにいたエリーサも眉をひそめる。「最初にニックスが突然いなくなり、今度は小Nが記憶を失うなんて。」
「確かに、あの晩、私たちは何かを避けているような状況だった……夜遅くまでね。私が先に眠ってしまったのは覚えているけど、その後何が起きたのか全然わからない。その後、ニックスが一人で調査に行ったような気がする。」小Nは一生懸命思い出そうとし、不安そうな声で続けた。
「ちょっと聞きたいんだけど、その話って昨日のこと?」シャーが探るように尋ねた。
「昨日じゃない!絶対に昨日じゃないよ!昨日の記憶ははっきりしている。昨日はベッドに入って、その後何も起きなかった。」小Nは確信を持って答えた。
「あの日の記憶……結局どの日のことなの?」シャーは眉をひそめた。「普通に考えれば昨日のはずだよね?僕たち、この村に来てまだ2日しか経っていないんだ。」
「違う……思い出した。今日……だ!」小Nは突然顔を上げ、恐怖に震える声で言った。
「今日?そんなことあるわけないでしょ!だって今日のことはまだ何も起きていないじゃない!」エリーサが思わず叫んだ。「まさか未来が見えたの?」
シャーは拳を握りしめ、指を噛みながらしばらく考え込んだ後、こう言った。「小N、もう一度思い出してみて。ニックスが何か特別なことを言ったり、何か手がかりを残したりしていなかった?きっと何かを知っていたはずだ。」
「本当に……何も思い出せないんだ!」小Nは苦しそうな顔をした。
それを見たシャーはその場で歩き回りながらますます真剣な表情になった。「こうしよう。エリサ、君が小Nを連れてニックスの手がかりを探しに行ってくれ。村中をくまなく探して、小Nが何か思い出しそうな場所や、ニックスが言っていたことを思い出せるきっかけがないか調べてみて。」
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