第33話 13 ニックスの死
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「さて、次は君の体内にある魔力の流れを感じてごらん。この空間を、この力場を感じるんだ。周囲の空気の中で魔力がどう動いているかも意識してみて。君には私の力があるから、そんなに難しいことではないはずだよ。でもまあ、こうして教えるのは少々面倒だね。」
ニックスは微かにため息をつきながら、紫色の魔力を手のひらに灯した。その魔力は小さく揺れ動き、周囲の空間に微妙な振動をもたらしていた。「覚えておいて、ここは偽りの空間だ。だから君なら、この虚構を突き抜けて、本当の空間を感じ取れるはずだよ。我々の推測によれば、今いるのは夢の中だ。現実と虚構の間にある膜を感じ取り、それを突破するんだ!」
ニックスの言葉と共に、紫色の魔力が稲妻のように空気を裂いた。その瞬間、まるで鏡が砕け散るように周囲の壁が崩れ、剥がれ落ちていく。夢の偽りの姿が剥ぎ取られ、真実の光景が露わになった――廃墟となった建物、割れたガラス、そしてかつて鮮やかで魅力的だったキャンディはすべて腐敗し、不快な臭いを放っている。
「これが、この夢の真の姿だ。」ニックスは静かに言った。「あとは目覚める方法を見つけるだけだね。君たちのチームには幻術が得意なやつがいるだろう?このことを伝えれば、そいつがどうすればいいか分かるさ。君たち二人がいてくれて、本当に助かるよ。」
ニックスが振り返り、微笑みながら次の言葉を口にしようとしたその時――
赤い光が空気を裂いた。
「ニックス、気をつけて!」幽霊と精霊がほぼ同時に叫んだ。
次の瞬間、木製の柄が重々しくニックスの頭を打ち付け、彼の身体は宙を舞って壁に叩きつけられた。鈍い音と共に、彼は力なく地面に崩れ落ちる。
暗がりの中から、全身を黒衣で包み、顔を包帯で覆った男がゆっくりと姿を現した。その顔には歪んだ笑みが浮かび、不気味な寒気を感じさせる。軽薄ながらも冷酷な声で言葉を紡ぐ。
「おい……おい!そんなのダメだろう?」男は首を振り、戯けた口調で続ける。「ちゃんと眠らないといけないんだよ!眠らない子には罰が下るんだからね、分かってる?」
男は低い声で笑い始め、その笑い声は次第に大きくなり、やがて狂気に満ちた大笑いへと変わっていった。
「罰っていうのは――死ぬことさ!」
言葉が終わると同時に、男は手にした重い大斧を振りかざし、気絶したニクスに向けて振り下ろした。空気を裂く音が響き、斧が床に叩きつけられる鈍い音と共に、埃が舞い上がる。その刃から、一滴の鮮血がポタリと滴り落ち、床に染み込んでいった……




