第33話 11 美しい夢を一つ
ニックスと小Nはずっと身を隠しながら移動し、やがて夜が訪れた。ニックスはようやく足を止め、静かに呟いた。
「もし眠ってしまったら、また今日が繰り返される。じゃあ、眠らなかったらどうなる?きっと何か違う展開があるはずだ。そうだ、これでこの村の穴を見つけられるに違いない。やっぱり、俺って天才だな!」
それを聞いた小Nは首をかしげながら言った。
「私はてっきり、何か技術を使って解決するのかと思ったよ。幽霊って空間を操れるんでしょ?直接この空間を破壊すればいいんじゃないの?」
ニックスは困ったように頭を掻きながら答えた。
「えっと……正直に言うと、そんな高度なスキルはあんまり得意じゃないんだ。でも大丈夫!俺の計画は絶対に成功するさ、期待しててくれ。」
夜も更けた頃、小Nはもう瞼が重くなり、半分寝ぼけながら尋ねた。
「ニックス、君が言ってた穴って、まだ見つからないの?」
「絶対に寝ちゃダメだ!何が起こるかわからないからな。でもさ、君が寝ちゃって、俺が寝なければループを打破できるんじゃないか?」ニックスがそう言って振り返ると、小Nはすでに肩にもたれかかり、深い眠りについていた。
「まったく……こんなところで寝たら風邪をひくぞ。」ニックスはため息をつき、起こそうとしたが、小Nは全く目を覚まさない。仕方なく彼女を抱き上げ、近くの高い建物に跳び上がった。「ここなら高いし、簡単には見つからないだろう。」
ニックスは自分の上着を脱いで、そっと小Nの体にかけ、彼女を包み込むようにした。
「これなら風邪をひく心配はないな。」そう言いながら、周囲を警戒するように見回したが、自分にも徐々に眠気が襲いかかってきた。まるで波が押し寄せるように、意識が朦朧としてくる。
「くそ……どうしてこんなに眠いんだ?」ニックスは自分の頬を叩き、眠気を追い払おうとした。その時、突然幽霊が姿を現した。
「この村全体、夜になると催眠ガスの成分が空気中に漂っているようだな。」幽霊が唐突に口を開いた。
「うわっ、びっくりした!急に現れるなよ!」ニックスは胸を押さえて安堵の息を吐くと、すぐに自信満々の笑みを浮かべた。
「でも、これでわかったよ。奴らは俺たちが夜に眠らないのを恐れているんだ。夜こそが、この村の穴が存在する鍵なんだな。」
ニックスの目には自信に満ちた光が宿り、すべてを掌握しているような雰囲気を漂わせていた。




