第33話 10 あなたは私の頭の中に存在している
ニックスは小Nの口を押さえ、二人は影の中に身を潜めて息を殺していた。通りの下では、一人の村人が不気味な足取りで歩き回り、まるで何かを探しているかのようだった。突然、その村人が急に顔を上げて上空を見上げた。しかし、屋根の上には誰もいなかった。村人の目は奇妙な赤い光を放ち、その後すぐにその場を立ち去った。
ニックスはほっと息をつき、小Nの手を引きながら数本の通りを素早く抜け、人通りの少ない静かな裏通りにたどり着いた。「わかるか?さっきは本当に危なかったんだ。もし捕まっていたら、取り返しのつかないことになっていたかもしれない。」ニックスは低い声でそう言い、その声にはわずかな緊張感が漂っていた。
小Nは顔を伏せつつ、しっかりとした口調で答えた。「でも、僕はニックスを助けたいんだ。ニックスの言うことは本当だって信じているよ。一度も、ニックスが狂っているなんて思ったことはない。」
ニックスは少し驚いたように問い返した。「そこまで俺を信じるのか?俺が間違った判断をするかもしれないとは思わないのか?」
小Nは軽くニックスの頭を叩き、笑いながら言った。「もちろん思わないよ。僕はニックスを信じてる。君の主人なんだから、信じるのは当然でしょ?」
ニックスはため息をつきつつも、口元に微笑みを浮かべた。「まったく、こんな冗談を言う余裕があるとはな。」そう言いながら周囲を見回し、安全を確認した後でさらに質問を続けた。「それにしても、どうやってここに来たんだ?エリサたちと一緒にいるはずだったんじゃないのか?」
小Nは少し恥ずかしそうに俯き、声を小さくして答えた。「えっと、実は僕の特殊能力なんだ……自分の体を透明にできるんだよ。光の屈折とか、そんな仕組みを使ってるらしい。エリサたちもそう言ってた。」そう言いながら、小Nは手を差し出した。その手はまるでレンズのように光を反射していて、少し奇妙な雰囲気を漂わせていた。
「これは……」小Nの言葉が終わらないうちに、ニックスは彼の話を遮り、感心した声で言った。「その能力は本当にすごいな!これなら、エリーサの『変装計画』なんて必要ないじゃないか。小N、お前は本当にすごいぞ!」そう言って、ニックスは小Nの頭を優しく撫でた。
「ほ、本当に?」小Nはおずおずと顔を上げ、不安げな目をしていた。「僕のことを怪物だと思うんじゃないかって心配してたんだ。でも、そう思われなくて本当に良かった……」彼は心の中でそっと決意を固めた。「ニックスには、僕の過去を話してもいいかもしれない……」




