第6話01希望の火
燃え盛る炎の光が揺らめき、戦場の空気を熱と緊張で満たしていた。ニックスの宣言が終わるや否や、炎の精霊はすでに次の攻撃の準備を整えていた。
「余計なことをすると死ぬぞ!」
怒りに満ちた叫び声とともに、精霊の掌に無数の赤い小さな火球が現れる。それらはまるで意志を持つかのように脈動し、瞬く間にニックスへと向かって放たれた。
ニックスは反射的に身を翻し、間一髪で攻撃をかわす。だが、その火球が地面に着弾した瞬間――
ドォンッ!!
凄まじい爆発音とともに、衝撃波が大地を震わせた。砂埃が激しく舞い上がり、熱を帯びた風が肌を焦がす。もし直撃を受けていたら、一瞬で燃え尽きていただろう。
(こいつを倒さなければ……)
考える間もなく、炎の精霊は再び動いた。燃え盛る体が音もなく宙を舞い、今度はニックスの背後を狙う。
「これで終わりだ!」
燃え上がる怒りを具現化するかのように、精霊はバスケットボールほどの巨大な火の玉を生み出し、猛烈な勢いでニックスへと放つ。
火球が空気を切り裂く音が響く。ニックスは咄嗟に身を捻ったが、避けきれない――!
彼は瞬時に剣を構え、その火の玉を迎え撃とうとする。しかし、次の瞬間――
轟ッ!!
爆発の衝撃がニックスを襲う。灼熱の炎が弾け、彼の体は宙を舞った。そして、無防備なまま地面へと叩きつけられる。
「ぐっ……!」
鈍い痛みが全身を駆け巡る。歯を食いしばりながら、ニックスはゆっくりと頭を上げた。視界が歪み、全身がまだ焼けるように熱い。
――そして、彼の目に映ったのは、怯えながらこちらを見つめる母娘の姿だった。
「また戻ってきたのか……?」
炎の精霊が嘲笑するように低く呟く。その声はまるで死の宣告のようだった。
「小娘、お前は死ぬ必要なんてなかったんだ。しかし、英雄ぶる必要もなかったのに……。」
精霊の身体がさらに紅く燃え上がる。まるで憤怒の塊が生きているかのように、灼熱の炎が渦を巻く。
「これで終わりにしてやる!!」
炎の精霊が放ったのは、先ほどとは比べ物にならないほどの業火。熱風が地を焼き、夜闇を一瞬にして赤く染め上げる。
襲いかかる炎の壁――まるで地獄の門が開いたかのような光景の中、ニックスは息をすることすらままならなかった。




