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第5話 最終章私の名前はニックス、あなたを倒したいのは私です。

「……仕方ない、終わるまで待つしかないか。」


ニックスは歯を食いしばりながら、奥歯を噛み締めた。


——戦えない。


——勝てない。


今の自分の力では、火焰精霊を倒すことなどできるはずがない。


じっと息を潜め、炎のゆらめきを見つめていたその時——


「来ないで!」


少女の叫び声が、暗闇を切り裂いた。


「——ッ!」


反射的に振り向いたニックスの目に映ったのは、燃え盛る炎の中、絶望に震える少女の姿だった。


その目の前には、火焰精霊。


灼熱の腕を振りかぶり、今にも少女を襲おうとしている。


「……くそっ!」


その瞬間、少女の母親が駆け寄った。


だが——


彼女には、火焰精霊と戦う力はない。


それでも、母親は少女を背後に庇い、その身を盾にするように 立ちはだかった。


——次の瞬間、火焰精霊の灼熱の拳が振り下ろされようとしていた。


「……飛び出さなければ。」


ニックスの脳裏に、冷静な判断が響く。


だが、足が動かない。


——飛び出しても、勝てるのか?


——否。勝てない。


現実はあまりにも残酷だった。


無謀に戦いを挑めば、死ぬ。


結局、怖いだけなんじゃないのか?


自分はまだ、ただの弱者なのではないか?


そうだ、どうせ勝てないんだ。なら、今は——


「君ならきっとできる。」


その時、脳裏にリードの言葉が蘇る。


「無理だ……俺は、まだそんなに強くない。」


しかし——


「お前は自分がやりたいことをやればいい。後悔しないことをやればいいんだ。」


「お前ならできる。なぜなら、お前は俺の息子だから。それだけで十分だ。」


——父の言葉が、胸に突き刺さる。


「くそ……どうすればいいんだ?」


その時——


「やるべきことをやるんだ。」


ニックスの中の精霊が、静かに語りかけた。


「君は見捨てるような人じゃないだろう?」


その言葉に、何かが弾けた。


考える前に、身体が動いていた。


「——っ!」


火焰精霊の拳が、少女と母親を襲おうとするその瞬間——


影が、炎の中を駆け抜けた。


「流剣法第一式——円舞曲!」


——刹那、空気が裂かれた。


剣の軌跡が閃光のように光り、火焰精霊の胴体を斬り裂く!


轟音とともに、火焰精霊が吹き飛ばされた。


そのまま隣の家の壁に激突し、瓦礫を撒き散らしながら倒れ込む。


「誰だ!俺の邪魔をするのは!」


火焰精霊が咆哮する。


ニックスは肩で息をしながら、剣を構え直した。


「……結局、ヒーローをやることになるのか。」


皮肉気に笑いながら、剣先をまっすぐ火焰精霊へと向ける。


「仕方ないな。」


目の前の敵を見据え、ニックスは一歩前へと踏み出した。


「さあ——思いっきりやろうぜ!」


火焰精霊がギラリと目を光らせる。


「お前は誰だ!」


その問いに、ニックスは迷いなく答えた。


「俺の名前はニックス——」


「この世で最強の男になる者だ。」



これで第 5 章は終了です。皆様のご支援ありがとうございました。 1500pvを突破しました。 それでは決戦の第6章をお届けします。ぜひ楽しみにしていてください!

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