第1話 04スライム
第1話のストーリーも半分に近づき、これからさらに面白いことが起こりますので、また次回お会いしましょう
狼の追跡と未知の存在
ニックスは少しためらったが、恐怖を振り払い、勇気を出してその黒い影に近づいてみることにした。心臓の鼓動が速くなるのを感じながら、一歩、また一歩と慎重に足を進める。
影の正体が次第にはっきりしてくるにつれ、彼の顔はみるみる青ざめた。
「うわあああ!狼だ!」
喉の奥から突き上げるような叫び声と同時に、ニックスは反射的に全力で走り出した。
彼の気配を察した狼が、低く唸り声を上げ、鋭い眼光で獲物を捕らえた瞬間、地面を蹴って追いかけてきた。
「くそっ、なんでこんな目に!?」
ニックスは走りながら、自分の運動能力の限界を超えていることに気づく。まるで風のように地面を蹴り、草を踏みしめながら加速していく。
「体育の時間にこれだけ走れたら、満点取れたのにな!」
そんな場違いな考えが頭をよぎるが、それどころではない。
——が、
まだ遠くまで逃げ切らないうちに、左の茂みからもう一頭の狼が飛び出してきた。
「えっ!?」と驚く間もなく、その狼は鋭い牙でニックスの肩に食らいついた!
「ぐあああっ!」
焼けるような痛みが肩に走る。彼は必死に右腕で狼の頭を叩き、振り払おうとするが、獣の顎はびくともしない。
「まさか、狂犬病になったりしないよな!? いや、それどころかここ異世界だし、もっとヤバい毒でも持ってるかも……!」
そんな不安が脳裏をよぎる。しかし、このままでは噛み殺されるのは時間の問題だった。
「冗談言ってる場合じゃない、何とかしないと!」
狼の牙がさらに深く食い込みそうになった瞬間、彼は全身の力を込めて思い切り肩を振り、なんとか振りほどいた!
勢いでよろけながらも、すぐさままた走り出す。
風を纏う狼たち
「異世界の冒険者には武器があるはずだよな!? 俺も何か……!」
そう思いながら、彼は辺りを見回す。だが、草と木々ばかりで武器になりそうなものは何もない。
背後から聞こえる唸り声に振り返ると、狼たちは驚くべき速度で迫ってきていた。
よく目を凝らすと——彼らの周囲に淡い波紋のようなものが揺れている。
「……風?」
それはただの空気の揺らぎではなかった。よく見ると、風の流れが狼たちの体にまとわりつき、まるで彼らを押し出すかのように推進力を与えていた。
「チート持ちの狼とか聞いてないぞ!」
ニックスは叫びながら、必死に足を動かし続けた。
しかし、狼たちは加速している。
このままでは——追いつかれる。
開けた世界と謎の境界線
そのとき——目の前の森が途切れた。
ニックスの視界に広がったのは、果てしなく広がる草原。
左側にはごつごつとした岩場と高い滝がそびえ、陽光を浴びた水しぶきが虹のように輝いていた。その景色は、言葉を失うほど美しかった。
「これが……異世界……?」
しかし、息を呑む間もなく、背後の狼たちの動きが変わった。
——彼らは森の端でぴたりと足を止めた。
「……え?」
ニックスは振り返り、息を整えながら狼たちの様子を観察する。
狼たちは、まるで見えない壁でもあるかのように、そこから一歩も進もうとしない。
「……ここが境界線?」
何か理由があるのか? この草原には、彼らが越えたくない何かが存在するのか?
疑問が頭を巡るが、とにかく助かったことに変わりはない。
新たな発見
「はぁ……疲れた……」
どっと力が抜け、草地に倒れ込む。肩の傷をさすりながら、朝の光に照らされた草原を見つめる。
風が草を波のように揺らし、隣の森の深い緑が静かな朝の風景に映えていた。
「異世界って……こんなに綺麗なのか……」
思わず呟く。
しばらく静かに考え込んでいると、ある疑問がふと頭をよぎった。
「もしここが異世界なら……俺は一人なのか?」
ニックスは立ち上がり、周囲を見回す。誰かがいる気配はない。
少し寂しさを感じながらも、**「とりあえず、進んでみるか……」**と自分を奮い立たせる。
滝のほとりで待つ者
ゆっくりと滝の方向へ歩き出した。
水音がだんだんと大きくなるにつれ、なぜか心が引き寄せられるような感覚を覚える。
そして——滝の近くまで来たとき、彼はふと足を止めた。
——滝のそばの岩の上に、見たこともない生き物がうずくまっていた。