第5話03あなたはただあなたである必要があります
その声はか細く、消え入りそうだった。
リードは少しの間黙ってから、ゆっくりと口を開いた。
「冒険は確かに危険だ。でも、それも君が選んだ道だろう?」
彼の声は静かだったが、どこか力強い響きを持っていた。
「挫折なんて、誰にでもある。特に冒険者なら尚更さ。だけど、もし君が続ける意志を持つなら——必ず、何かを得られるはずだ。」
「……でも、本当に怖いんだ。」
ニックスの声は震えていた。
恐怖は、常にそこにあった。
あの戦いの中で感じた、命の危機。
喉の奥が苦しくなるほどの絶望感。
「怖がるのは普通のことだよ。」
リードは優しく微笑んだ。
「だけど、大事なのは、その恐怖とどう向き合うかだ。」
ニックスはゆっくりと顔を上げる。
リードの瞳は、まるで夜空に輝く星のように揺るぎない光を放っていた。
「もし君が望むなら、一緒にこの挑戦に立ち向かおう。」
その言葉は、静かだけれど、確かに心の奥に届いた。
ニックスはしばらくの間、何も言えなかった。
けれど、やがて彼の目の中に、ほんのわずかに希望の光が差し込む。
「……本当に?」
問いかける声は、まだ弱々しかったが、それでもどこか前向きな色を帯びていた。
リードはしっかりと頷いた。
「もちろんさ。僕たちは仲間だから。」
彼は笑みを浮かべ、ニックスの肩を軽く叩く。
「どんな困難があっても、一緒に乗り越えていこう。」




