第4話02ゴブリン戦
「ところで、巨人ゴブリンって一体どんな奴なんだ?」
ニックスは興味津々に目を輝かせながら尋ねた。
「普通のゴブリンとは比べ物にならないほどの化け物さ。」
ヘンリーが肩をすくめながら答えた。「体は人間の数倍はあるし、力も桁違いだ。全身はまるで岩のように硬く、ちょっとやそっとの攻撃じゃ傷一つつかない。肉厚な身体が刃を跳ね返すから、戦うとなると厄介極まりない。ほとんどの冒険者が遭遇したくない相手だな。」
「でも、隊長がいれば問題ないさ!」
クリが自信満々に笑った。
「そうだな。俺も前に隊長の戦いを見たことがあるが、あの強さは本物だ。」
チャーリーも力強く頷いた。
「おいおい、噂をすれば影ってやつか?」
ヘンリーが前方を指さして笑った。「ほら、隊長が戻ってきたぞ。」
「隊長、何か収穫はあったか?」
チャーリーがリードに目を向けた。
「……いくつか気になる点があるな。」
リードの表情は鋭く引き締まり、声には緊張が滲んでいた。「周囲に戦闘の痕跡が残っている。何者かがここで戦った形跡がある。」
「戦闘の痕跡……?ゴブリンの仕業か?」
ニックスは胸の奥に不安が広がるのを感じながら尋ねた。
「その可能性は高い。」
リードは地面にしゃがみ、指で土をすくいながら答えた。「足跡の深さと散らばった武器の破損具合を見る限り、相当な力の持ち主がいたはずだ。おそらく、まだ近くにいる。」
「どうする?このまま進むのか?」
ヘンリーが慎重に尋ねる。
「クリス、お前の魔法で偵察できるか?」
リードが静かに指示を出した。
「任せてくれ。」
クリスは頷くと、そっと地面に手をついた。
「え……何をしてるんだ?」
ニックスは疑問に思いながらクリスの手元を見つめた。
「これは俺の得意魔法、『音波探知』さ。」
クリスは自信たっぷりに説明する。「コウモリみたいに音波を発して、周囲の様子を探ることができるんだ。どこに何がいるのか、壁の向こうに何が潜んでいるのかも察知できる。」
「す、すげぇ魔法だな……!」
ニックスは感嘆の声を漏らした。
「いや、完璧な能力じゃないさ。」
クリスは目を閉じたまま低く答えた。「相手が俺よりも強い場合、音波を遮断されることもあるからな……。」
リードが息をのんで尋ねた。「どうだ、何か感じるか?」
「……いや、今のところ近くには何もいない。」
クリスは慎重に感覚を研ぎ澄ませる。「けど……待て、何かいる!みんな、気をつけろ!やつらは地面の下に潜んでいる!」
その瞬間——
ズズズッ……!
地面が突如として揺れ、大量のゴブリンが土煙とともに飛び出してきた!
「隠れてやがったのか!?くそっ、戦闘開始だ!」
チャーリーが鋭く叫ぶ。
「分かった……なら、こっちも応戦する!」
チャーリーは素早く印を結び、叫んだ。「土魔法——スパイクランス!」
ゴゴゴゴ……!
大地がうねり、鋭い岩の槍が次々と隆起し、ゴブリンの群れに襲いかかる。
刹那——血しぶきが舞い、断末魔の叫びが響き渡る。
こうして、壮絶な戦いの幕が切って落とされた。




