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第3話07暗い森への旅

夜の決意、そして新たな試練


リードの背中が闇に溶けるように遠ざかっていく。ニックスはその姿を見送ると、静かな夜の帳に包まれた。頭の中には彼の言葉が何度も反響していた。


——「この世界では、死んだら本当に死ぬ。」


その一言が、心の奥深くに重くのしかかる。まるで冷たい刃が胸を撫でるような感覚に、ニックスは思わず肩を抱いた。


「……そんな簡単に言うなよ。」


夜空に向かって呟く。しかし、自分に言い聞かせるように首を振った。考えても仕方ない。生き延びるしかないんだ。


彼は拳を握りしめ、決意を固める。「明日の朝、冒険者ギルドへ行こう。必ず、この世界で生き抜いてみせる。」


心に燃え上がった決意の炎は、少しずつ闇の恐怖を打ち消していく。そして彼は、静かに目を閉じた。



---


新たな依頼、予想外の出会い


翌朝、冷たい朝の空気を吸い込みながら、ニックスは冒険者ギルドの扉を押し開けた。


中はすでに活気に満ち、クエスト掲示板の前には多くの冒険者が集まっていた。彼はその中をすり抜け、掲示板に貼られた依頼を目で追う。


「低額報酬の雑用ばかり……これじゃ生活すらままならない。」


焦燥感が胸を締め付ける。だが、次の瞬間、目に飛び込んできたのは——


「高額依頼:ゴブリン討伐」


報酬の額は、他の依頼と比べて破格だった。だが、そのすぐ下に記された注意書きが目を引く。


「推奨:パーティでの討伐」


(単独では無理か……)


ニックスが考え込んでいると、すぐそばから話し声が聞こえてきた。


「まだ一人足りないみたいだな……」


その言葉に反応し、彼はそっと声をかけた。


「……俺も参加していいか?」


会話をしていた男たちは、驚いたようにニックスを見た。


「お前、強いのか?」


「君が以前、火烈鳥を倒した外来者だって聞いたよ。」


「へぇ……それなら悪くないな。」


チームのメンバーは顔を見合わせ、うなずいた。


(……通ったか。)


安堵の息をつくニックスだったが、そこでふと視線を感じる。振り向くと——そこに立っていたのは、リードだった。


「おはよう、ニックス。」


彼は微笑みながら挨拶する。


「……お前、なんでここに?」


驚きと警戒が入り混じった声を出すニックスに、リードは肩をすくめた。


「実は、彼らに話しておいたんだよ。君が異世界から来たことを。」


「は……?」


ニックスは思わず目を見開く。


「心配するな、彼らは俺が信頼している仲間だ。」


リードがそう言った途端、別のメンバーが口を開いた。


「隊長、今回のクエストは……危険すぎませんか?」


「確かに、普通のゴブリンなら大したことはない。でも……今回のターゲットは違う。」


リードが静かに告げる。


「ゴブリンロードだ。」


「ゴブリンロード……?」


ニックスは眉をひそめた。


「それって、ただのゴブリンとは違うのか?」


「全くの別物さ。」


別のメンバーが説明する。


「ゴブリンロードは、群れを統率する指導者だ。通常のゴブリンは個々で行動するが、ロードは違う。戦術を使い、数十匹のゴブリンを指揮する。」


「しかも、体格も力も、普通のゴブリンより圧倒的に上だ。」


リードが言葉を引き継ぐ。


「つまり……弱い雑魚を蹴散らすつもりなら、死ぬぞ?」


その言葉に、ニックスは背筋に冷たいものを感じた。


(……舐めてかかるのは危険か。)


だが、ここで引くわけにはいかない。


「……いいさ、それでも俺は行く。」


彼は拳を握りしめ、真っ直ぐにリードを見た。


「決まりだな。」


隊長が満足げに頷く。


「ゴブリンロード討伐作戦、開始だ。」



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