第3話03新しい服と冒険者
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「あ、やばい!もうすぐ受付時間が終わるんだった!」
ニックスはリードに感謝の言葉を投げかけると、慌てて駆け出した。
「ありがとう、大叔!急いで服を買いに行かないと!」
「……大叔?!」
リードは一瞬固まり、不満げに眉をひそめた。
「俺、まだ二十代なんだけど!そんなに年寄りに見えるのか?」
ニックスは走りかけた足を止め、ちらりとリードを振り返る。
(まさか……この人も俺みたいに異世界から来た人間か?)
一瞬疑念がよぎるが、すぐに頭を振った。
「いや、そんなはずないか。」
そう思い直すと、商店に向かって全速力で駆けていった。
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場面転換:服屋
店の扉を開けると、奇抜なデザインの服がずらりと並んでいた。
棚にかかるのは、淡く光を放つ布のローブ、小さな炎がちらつくマント、そして――胸元にぽっかり穴が開いた謎の服。
「……これ、デザインなのか? それとも単にボロボロなのか?」
ニックスは呆れたように小声でつぶやく。
(まあ、せっかく異世界に来たんだ。病院服のままよりはマシだろう。)
そう決意すると、慎重に服を選び始めた。
最終的に手に取ったのは、白地に紫のストライプが入ったロングコートと、動きやすそうな黒いズボン。
「よし、これなら冒険者っぽく見えるだろ。」
満足げに頷くと、試着室で服を着替え、新しい自分を鏡で確認する。
(これで、異世界転生の主人公らしくなったか?)
クスリと笑いながら、ギルドへ向かって走り出した。
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冒険者ギルド
夕日が赤く染まり始めた街を駆け抜け、ギルドの大きな門へと飛び込んだ。
「はぁ、なんとか間に合った!」
息を切らしながら受付へ駆け寄る。
「今からでも申し込みできますか!?」
カウンターの向こうにいた受付係が、微笑みながら頷いた。
「はい、まだ大丈夫ですよ。」
「よかった!」
ニックスはホッと安堵の息をつきながら、懐から十ゴールドを取り出した。
「これが登録料です!」
差し出された金貨がカウンターの上でチャリンと音を立てる。
「じゃあ、これで俺も正式な冒険者ってことですね!」
興奮気味に言うニックスを見て、受付係は柔らかく微笑んだ。
「はい、ようこそ、冒険者ギルドへ。」




