第3話01火災事件
今朝起きたら500PVを超えていました、これからも頑張っていきますのでよろしくお願いします。
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宝庫の扉がゆっくりと閉まる。
ニックスは腰に剣を帯び、外の空気を深く吸い込んだ。
(……やっぱり、これがないと落ち着かないな。)
剣の感触を確かめるように柄を握りしめながら、隣に浮かぶ小さな精霊に視線を向ける。
「おい、『火の事件』って知ってるか?」
精霊は半目になり、めんどくさそうに肩をすくめた。
「知るわけないだろ?」
「そっか……じゃあ、夢子に聞いてみるか?」
「夢子?それ誰だ?」
「ああ、お前は彼女を知らないよな。俺を助けてくれた人の一人さ。」
精霊は微かに眉をひそめた。
「俺は聞かない方がいいと思うけど?」
「なんで?」
「時々、お前がわざとバカを演じてるのか、本当にバカなのかわからなくなるよ。」
精霊は呆れたように言いながら、ふわふわと宙を漂う。
「考えてみろよ。その事件が大したことじゃなかったら、向こうだってとっくに教えてるはずだ。それにさっき、その件を話したやつの顔……嫌悪感が隠せてなかっただろ?」
ニックスは肩をすくめた。
「まあ、そうかもしれないな。でも、とりあえず冒険者ギルドに行ってみようぜ。この手の世界では、冒険者ギルドが情報の集まりやすい場所だし、そこで何かわかるかもしれない。」
精霊はため息をついた。
「お前が何考えてるのか、本当にわからなくなる時があるよ……。」
そのとき、ニックスはふと何かを思い出したように、精霊を見た。
「そうだ、お前の名前は?」
「……急にどうしたんだ?」
「いや、せっかくこれから一緒にやっていく仲間だし、名前くらい知っておこうと思ってさ。」
精霊は少し沈黙した後、ふっと苦笑するように肩をすくめた。
「俺の名前か……好きに呼べばいいさ。」
「適当だな。」
「この世界では、精霊を仲間扱いする奴なんてほとんどいないからな。大抵は俺たちを道具として利用するだけだ。ある者は精霊を使って戦い、別の者は精霊で金儲けをする……。」
ニックスは苦笑しながら言った。
「お前、やけに口数が多いな。じゃあ……『多話』って呼ぶか。」
「多話?……さすがにお前らしい発想だな。」
精霊――多話は呆れたように首を振り、ニックスを見つめる。
「お前、本当に変わった奴だよ。」
「そうか?」
ニックスは自嘲気味に笑い、剣を軽く握り直す。
「俺はもともと変わってるんだよ。これからよろしくな、多話。」




