第11話 10これが私たちのコンボです
ニックスはフィードに作戦を伝えた。二人の前には石の巨人、背後には巨大な蛇が立ちはだかっている。
ニックスの剣が輝きを放ち始めた。
「フィード、動くな。そのまま、俺に手を触れてくれ。」
魔力が徐々に満ちていく。
「もう少し……あと少し……」
迫りくる巨蛇と石の巨人。二人との距離は一気に縮まる。
その瞬間——
「今だ!短距離転送魔法、トランスポート!」
次の瞬間、二人の姿は石の巨人の肩の上に移動していた。
そのまま、一気に空中へ跳躍する。
石の巨人は予想外の出来事に反応できず、振り下ろした拳は巨蛇を直撃した。
「フィード、俺たちには一度きりのチャンスしかない!」
フィードは全身に力を込め、拳にエネルギーを集中させる。
「震空拳!」
だが、その拳は直接石の巨人を狙わず、代わりにニックスの剣の柄へと叩き込まれた。
その瞬間、剣が五色の光を放ち、凄まじい音とともに石の巨人へと突き刺さる。
煙と塵が舞い上がり、視界が塞がれる。
二人は地面に着地し、荒い息をつきながら互いを見た。
「……成功したか?」
「そう願いたいな。」
フィードが尋ねる。
「どうしてこんな戦術を?」
「俺の技は発動に時間がかかる。そんな余裕はなかった。だから、お前を発射器として使って威力を上げたんだ。上から叩き込めば、重力も利用できる。」
「この一撃で倒せていればいいが……」
やがて、煙が晴れていく。
しかし、そこに広がる光景は、二人の予想を大きく裏切るものだった。
「……なんだと?」
巨人は——まだ立っていた。
しかも、両手で剣をしっかりと受け止めていたのだ。
だが、その両腕には深い亀裂が走り、ダメージは確実に通っている。その亀裂は腕から肩にまで広がり、内側から光が漏れ出していた。
さらに、巨人の背後にいたはずの巨大な蛇は、さきほどの拳によって粉々に砕け散っていた。
「……!」
次の瞬間、巨人は剣をニックスに向かって投げ返した。
ニックスは反射的に剣をキャッチする。
「……お前、まだ魔力は残っているか?」
「フィード、お前は?」
「俺もほとんど残ってない。もう、さっきみたいな威力は出せない……」
「クソッ……あと少しだったのに……」
ニックスは地面に落ちた剣を拾い上げた。
その瞬間——
彼の視界の隅に、"それ"が映った。
まるで幽霊のような、揺らめく影。
「……ヴァンタス?」
ニックスは、無意識のうちにその名を呟いていた。




