第11話 09私を信じてる
二人は無言のまま、それぞれの戦場で激闘を繰り広げていた。
フィードが言葉を発すると同時に、彼は機敏に身を翻し、石の巨人の攻撃をかわした。ニックスもそれに合わせ、反対方向へと飛び退る。
「賊を討つには、まずその王を倒せ。」
二人は左右から石の巨人を挟み撃ちにするつもりだった。しかし——
「ッ!?」
突如、空から巨大な岩塊が降り注ぎ、フィードの進路を塞いだ。その一瞬の隙を逃さず、石の巨人はフィード目掛けて拳を振り下ろす。
「しまった!」
フィードは両腕で咄嗟にガードするが、その衝撃は凄まじく、彼の体は地を滑りながら遠くへと吹き飛ばされた。
「フィード!」
助けに向かおうとしたニックスだったが、前方に影が差す。目を向けると、巨蛇が獲物を狙うように鎌首をもたげ、鋭い牙を剥いていた。
「ちっ……邪魔だ!」
ニックスが剣を構えた瞬間、巨蛇は俊敏に動き、まるで知恵を持つかのようにその鋭い牙でニックスの剣を噛み砕こうとする。圧倒的な力に引きずられ、ニックスの体は強引に別の方向へと投げ飛ばされた。
——こうして、二人は分断された。
「くそっ……何か策を考えないと……!」
ニックスは焦燥を噛み殺しながらも、冷静に状況を見極める。巨蛇の攻撃はますます苛烈さを増し、一撃でもまともに受ければ命はない。
「“流星”を使うには時間がかかりすぎる……。」
一方、フィードの視点——
彼は全力で石の巨人の猛攻をかわし続けていた。
「こいつ……防御力が異常に高い。さっきまではダメージを与えられたのに、今はまるで通用しない……!」
石の巨人の体表には、まるで魔力が凝縮されたかのような光沢が浮かんでいた。これは、さっきまでとは違う"何か"が起きている証拠だ。
フィードは隙を見つけ、渾身の一撃を巨人の腹へと叩き込んだ。——しかし、その手応えはまるで鉄壁。返ってきたのは自分の腕に響く激痛だけだった。
「ぐっ……ッ!」
その瞬間、石の巨人は容赦なくフィードを掴み、まるで玩具のように投げ飛ばした。
「クソッ……こいつ……!」
地面に叩きつけられたフィードを見たニックスの脳裏に、ある"閃き"がよぎる。
巨人の腕から溢れる魔力、それはまるで"鎧"のように身体を覆い、防御力を高めている——ならば、"それを剥がせば"。
「フィード、俺を信じるか?」
突然の問いかけに、フィードは息を整えながらも迷わず答えた。
「当然だ。」
ニックスは微笑し、剣を構え直した。
——反撃の刻は、ここから始まる。




