第11話01私は自分の世界をコントロールします
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ニックスは幽霊と熾烈な接近戦を繰り広げていた。
拳と脚が激しく交錯し、夜の森に鈍い衝撃音が響き渡る。
一発ごとに空気が揺れ、互いの攻撃が火花を散らすようだった。
幽霊が鋭い右拳を放った。
しかしニックスは、まるで風を受け流すかのように身を左へ翻し、逆に上へと繰り出す強烈なアッパーカットを返した。
バシュッ!
その瞬間、視点が切り替わる。
フィードが同じ動きで、コントロールされたニックスの顎を的確に撃ち抜いた。
二つの戦場が奇妙に共鳴し、まるで鏡の中で反射し合っているかのようだった。
「どうした?」
フィードは息を切らしながら、冷たく挑発する。
「君は強いんじゃなかったのか?」
言葉と同時に、彼は再び前進し、重い拳をニックスの腹部に打ち込もうとした。
しかし、コントロールされたニックスは素早く左右に体を翻し、隙を見て右脚を鋭く振り抜く。
ドガッ!
蹴りはフィードの右脚に的確に命中した。
だが、フィードは怯まなかった。
「まだまだ…!」
そのまま跳び上がり、ニックスの肩を力強く掴むと、一気に全力で地面へと投げ飛ばした。
ズシャアアア!!
ニックスの体が地面に激突し、土と砂埃が激しく舞い上がった。
その煙の中で、彼のシルエットが不気味に揺らめく。
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再び視点が切り替わる。
煙の中から、幽霊が悠然と歩み出てきた。
「これが君の全力か?」
唇に冷たい笑みを浮かべる。
「本当に弱いな。」
その言葉が合図となり、ふたたびニックスと幽霊は激しくぶつかり合った。
拳と蹴りが交錯し、岩のような衝撃が夜の空気を裂く。
ニックスの目は鋭く燃え上がり、幽霊の冷笑を切り裂こうとするかのようだった。
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戦いの流れは、まるで鏡のように二つの世界で同期していた。
フィードとニックス、二人は同じ姿勢で相手の攻撃を避け、同じ動きで反撃する。
時間がねじれたような錯覚の中、二人の戦場は交互に切り替わりながら続いていく。
しかし、ついに均衡が崩れた。
幽霊が一瞬の隙をつき、重い拳をニックスの側頭部に叩き込んだ。
ドゴォン!!
ニックスは吹き飛ばされ、無防備に地面へと叩きつけられた。
「やれやれ…」
幽霊は肩をすくめ、ニックスを見下ろした。
「君はまだ僕の体の中にいるんだ。こんな程度で勝てるとでも?」
彼の声は不気味に響き、闇の中に溶け込んでいく。
「君の魔力の制御力は本当に驚くほど弱いな。」
幽霊の優位が揺るぎないことを、まるで楽しんでいるかのようだった。
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しかし、ニックスの目がゆっくりと開かれる。
その瞳には、敗北の影はなかった。
「ここは…俺の体だ。」
ニックスはゆっくりと立ち上がり、両拳を強く握りしめた。
「俺の世界は…俺が決めるんだ。」
震える声ではなかった。
それは、確信と決意に満ちた声。
「集中…集中だ。」
額に汗を滲ませ、深く息を吸い込む。
「ここは俺の世界だ。幽霊ごときに…好きにはさせない…!」
その瞬間——
ゴゴゴゴゴ…ッ!!
周囲の空間が一変した。
大地が不気味に震え、空気が歪み始めた。
ニックスの足元から、無数の魔法陣が現れ、黄金の光を放ちながら宙を舞う。
そして、地面から爆発的に現れた数本の鎖が、閃光のように走り、幽霊の四肢を絡め取った。
ギィィィィィィィン!!
鎖は鋼のごとく硬く、まるで幽霊の魂そのものを縛り付けるかのように食い込んでいく。
「な…に…!?」
初めて、幽霊の表情に動揺が走った。
ニックスは静かに、しかし確実に幽霊を見据えた。
「これが…俺の世界のルールだ。」
その目は、燃え盛る闘志と揺るぎない信念を宿していた。
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