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第10話 10コントロールし、コントロールされる



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「ニックス、準備はいいか?」


戦闘から少し距離を取っていたフィードが低く声をかけ、素早く何かをニックスに投げ渡した。銀色に鈍く輝く奇妙な装置——それは魔力を吸収するための特殊な道具だった。


ニックスがキャッチすると、装置は冷たい金属の感触とともに、かすかに脈動しているのが分かった。まるで生き物のように魔力を渇望している。


「この装置が魔力球を吸収できるってことは、相手の魔力も吸い尽くせるってことだ。」


フィードの声には確信があった。しかし次の言葉には、わずかに緊張が滲んでいた。


「もちろん、安全のために最大モードに設定した。この空間は瓦解する。覚悟はいいか?」


ニックスは無言で頷き、鋭い視線を幽霊に向けた。その一瞬、空気が張り詰め、次の激闘の火蓋が切って落とされた。


装置が幽霊の体に近づくと、まるで巨大な掃除機のように、強烈な吸引力が魔力を飲み込み始めた。周囲の空間が歪み、地面が揺れ、木々の葉が震えながら舞い上がる。


「今だ…!」


ニックスはその刹那を逃さず、まるで風そのものになったかのように駆け出した。


「円舞曲・改!」


彼の剣が光を裂き、幽霊の体を正確に捉えた。


鈍い衝撃音と共に、幽霊はたまらず吹き飛ばされ、重い体が木に叩きつけられた。その木は裂けるように真っ二つに割れたが、ニックスの猛攻はそこで終わらなかった。


剣の刃は幽霊の胸に深々と突き刺さったまま、ニックスはそのまま敵を引きずりながら、森の中で美しい弧を描いた。足元の地面は抉られ、軌跡には火花が散った。


やがて攻撃の連撃が終わると、幽霊は荒く息を吐きながら地面に崩れ落ちていた。


「さて、次は魔力球で吸収する番だ。」


ニックスはゆっくりと近づき、腰から魔力球を取り出した。魔力球は淡い紫の光を静かに放ち、まるで深海の宝石のように妖艶だった。


彼は幽霊の胸の上にそっとそれを置いた。その瞬間、魔力球が幽霊の残留魔力を貪欲に吸い始め、微光が脈打ちながら徐々に強くなった。


次の瞬間——


眩い閃光が爆発した。


強烈な白光が森全体を包み込み、一瞬すべての音が消えた。


そして光が静かに収束すると、幽霊は完全に魔力球に封じ込められていた。


「成功した…」


ニックスはほっと息をつきながら魔力球を装置に取り付けた。球体がカチリと音を立てて収まり、装置が淡い光を放ちはじめた。


「ニックス、準備はできたか?」


フィードの問いに、ニックスはゆっくりと頷いた。


「おう、準備はできてる。魔力を吸収する間、俺を守ってくれ。」


「もちろんだ。安心して吸収してくれ。」


ニックスは地面に座り込み、魔力球を装置にセットした。装置が光を増し、魔力球の下に小さな穴が開いた。魔力球は吸い込まれるように滑り込み、装置の中心に完全に収まった。


「始めよう。」


ニックスはわずかに緊張した表情を浮かべたが、すぐにそれを振り払い、装置を起動させた。


すると装置が再び強烈な光を放ち、その光が一本の細い光線となってニックスの胸に照射された。


次の瞬間、魔力が彼の体内に押し寄せた。


「すごい魔力だ…!」


ニックスは苦痛に顔を歪め、全身が痺れるような感覚に襲われた。視界がぼやけ、耳鳴りが響き、まるで魂そのものが揺さぶられているかのようだった。


フィードも不安そうにニックスを見つめていた。


だが、次の瞬間——


「なぜ今まで誰も幽霊を吸収しなかったか…今、答えを教えてやる。」


低く不吉な声が響いた。


その声は、消えたはずの幽霊のものだった。


「私の特殊な性質上、魔力は削がれない。」


ニックスの表情が凍りついた。


「幽霊を吸収した場合、簡単に私に支配されることになるんだ。」


「もちろん、今それを知っても…もう遅い。」


幽霊の冷たい嘲笑が、ニックスの心を氷のように冷たく締め付けた。


その瞬間、ニックスの身体の中に何か得体の知れない存在が入り込む感覚がした。


それは、まるで闇そのものが彼の精神を呑み込もうとしているかのようだった——。



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