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第10話 06幽霊のたまり場




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「ニックス、お前の魔力球はまだ光っていないか?」

フィードがふと足を止め、森の静寂を切り裂くように尋ねた。


「まだだよ。一体どんな魔物を探しているのか、まったく分からないな…。」

ニックスは魔力球をそっと掌の中で転がしながら、どこか不安げに前方を見つめた。


二人が黙々と森の奥へと進んでいくにつれ、周囲の光が徐々に薄れ、木々の影がまるで生き物のようにうごめき始めていた。


「他のエリアはもう全部探索したんだから、前に進むしかないな。」

フィードは声を低くし、背後を一瞬振り返ったが、すぐに前を向いた。その瞳の奥には、かすかな緊張が浮かんでいる。


二人はまだ知らない。この一歩が、彼らの人生で最も正しい選択の一つになることを——。



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「この森…さっきよりもずっと暗いな。空気まで重くなってきてる。」

ニックスがつぶやくと、フィードがふと立ち止まって森の奥を睨んだ。


「…周囲に鬼火みたいなものが見える。」

「いや…違う。本当に鬼火が漂っているんだ。」


薄青い光の球が、まるで意思を持つかのようにふわりと木立の間を漂い、暗闇の中でぼんやりとした光の軌跡を描いていた。それは奇妙に美しく、しかし同時に背筋を凍らせる不吉さを帯びていた。


警戒を強めながら歩を進めていると、突然、ニックスの魔力球が淡い光を放ち始めた。


「前方だ。」


緊張が走った瞬間、草むらがざわめき、鋭い風を切る音とともに一匹の狼が飛び出してきた。銀灰色の毛並みが月明かりを受けて淡く輝き、鋭い牙が光る。


「まさか…こんな遠くまで来て、これだけのためか?」

フィードが皮肉めいた笑みを浮かべる。


「まあ、文句は言わずに。さあ、始めよう。」


二人が戦闘態勢を整えたその瞬間、狼の目に突如として恐怖の色が宿った。まるで背後に得体の知れない存在を感じ取ったかのように、狼は一溜まりもなく草むらの奥へと逃げ出した。


「…ニックス、お前の魔力球が選んだ相手が、逃げたぞ。」

フィードが訝しげに狼の消えた方向を見つめる。


「いや、違う。前にいる…あいつだ。」


ニックスが低くつぶやいた瞬間、草むらの奥からじわりと現れたのは、漆黒の闇から滲み出るような薄暗いシルエットだった。


その存在が現れるや否や、周囲の空気がねじれ、微かな紫色のオーラが辺りに満ちていく。ひんやりとした冷気が肌を刺し、呼吸さえ重く感じさせる異様な気配。


その生物はまるで霧のように半透明で、下半身は闇に溶け、揺らめいていた。だが、その顔だけははっきりとした輪郭を持ち、ぎらりと光る二つの大きな目が、底知れぬ敵意と飢えを秘めていた。


「お前たちは…何者だ?」


声は不気味に響き渡り、空気を震わせた。


「なぜ俺の領域に踏み込んできた?」


「…はは、魔力球が光っているってことは、ターゲットは俺か。」

ニックスが口元に薄い笑みを浮かべ、視線をまっすぐ相手に向けた。


「フィード。」

「了解。」


フィードが剣を構え、魔力の気配が瞬時に高まる。


「お前たちは…本当に運が悪いな。」


霧のような怪物が不気味に笑う。その笑いは氷のように冷たく、心を凍てつかせる。


「幽霊の領域に迷い込んだとは…な。」


ニックスとフィードは、一瞬の迷いもなく全身の魔力を解放し、戦闘の構えを取った。空気が張り詰め、互いの視線が交錯する。


「おう、戦う気か?」

怪物が楽しげに問いかける。


「いいだろう…相手してやるさ。ただし、退屈な戦いになるだろうけどな。」


夜の森に、静かな戦いの幕が上がろうとしていた——。



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