第10話01最強の男
ニックスとフィードは大通りを歩きながら、少し疲れた様子で話していた。陽の光が強く降り注ぎ、周囲の人々の足音が響いている。
「フィード、前に俺たちを助けてくれた人たちがどこにいるか知ってるか?」
ニックスがふと疑問を口にした。
フィードは少し考え込んだ後、顔を上げて答える。
「そんなこと、俺が知るわけないだろう。でも、ちょっと調べたんだ。今日、あの二人は任務に出てないみたいだし、よく行く場所を聞いたから、そこに行ってみよう。運が良ければ、会えるかもな。」
二人は歩きながら話を続け、街角の賑わいを抜け、徐々に静かな場所へ向かっていった。大通りを離れると、空気が少しひんやりとして、風が心地よく頬を撫でる。やがて、広場の端で二人を見つけた。
「ニックス、見つけたぞ。」
フィードが声をかけると、ニックスもその声に反応して、二人の元へ走り寄った。広場の片隅で、目立たないように座っている二人の姿が見えた。彼らの顔にはわずかな疲れが浮かんでいるが、どこか落ち着いた雰囲気が漂っていた。
「あなたたちは一体誰なんだ?何を企んでるんだ?」と、男性が警戒しながら声を発した。その目は鋭く、ニックスたちを見つめている。
「いや、悪意はないんだ。ただお礼を言いに来ただけで。」ニックスは笑顔を見せ、緊張を和らげようとした。
「ああ、君たちか」と、隣の女性がようやく口を開く。「忘れたの?前に任務中に道端で傷ついた二人を見つけたじゃない。」
男性もその言葉を聞いて、少しだけ肩の力を抜いた。
「ハハ、君たちか。あの時は本当に驚いたよ、君たちが死んでるんじゃないかと思ったからね。」男性は笑いながら言ったが、その目には少しの懐かしさが浮かんでいた。
「本当に感謝している。君たちがいなかったら、本当に死んでいたかもしれない。」ニックスは心からの感謝を込めて頭を下げた。「ところで、君たちも凄いな、あの『死のセメント』に遭遇してすぐにやられなかった上に、彼を追い払うなんて。」
女性が少し驚いたように頷き、男は真剣な表情で続ける。
「そうだ、『49番』だな。」
「『49番』?」ニックスはその名前に耳を傾け、首をかしげた。
男性は深く息を吸い、語り始める。
「簡単に言うと、全部で50人いるんだ。それが、俺たち冒険者の最重要指名手配犯。奴らは、戦闘力や魔力、戦術、すべての面で異常な強さを誇る。上位に行くほど、もちろん強くなる。そして、第一位の実力は、国の最強の男に匹敵すると言われている。だから、奴らの動向は常に注視しなきゃならない。」
「それって…かなりヤバい奴らってことか?」フィードが冷や汗をかきながら言った。心の中で、あの『死のセメント』がどれほど恐ろしい存在なのかを実感している。
「そうだな。」男性が頷く。「でも、少なくとも君たちは、あの『49番』に対して無駄な戦いを挑むような真似はしなかった。それだけでも十分すごいことだ。」
「それにしても、どうして『49番』って呼ばれているんだ?」ニックスがさらに質問を重ねた。
女性が少しだけ微笑んだ。
「それはね、番号が付けられているからさ。順番に、最強の者たちが番号をもらうんだ。それがそのまま名になる。『49番』の実力者も、もちろんその例に漏れない。だから、君たちがあの戦闘を生き延びたことは、かなりの価値がある。」
ニックスとフィードはお互いに顔を見合わせ、無言で頷き合った。戦いの中で生き延びることができたのは偶然ではない。もっと強くなっていかなければ、次はどうなるか分からない。




