第63話 15 大軍迫る
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ニックスたちは一日がかりの長い道のりを経て、ついに巨大な暴風へと辿り着いた。
同時に、ニックスの胸の奥では一つの疑念が渦を巻き始める。
――あの男が言っていた「夕暮れ」とは、一体何を意味しているのか?
「うわぁ……本当に前にでっかい暴風があるな。」
遠くで暴れ狂う風の壁を見ながら、フィードが目を丸くする。
「だからこそ“ストーム戦線”って呼ばれてるんじゃない? それとも“暴風戦線”だったっけ?」
エリーサは辺りに誰かが尾行していないか警戒しながら呟いた。
安全を確認した数人は、無事に合流地点へ到着した。
そこにはすでに軍営が設営されており、兵士たちが忙しなく行き交っていた。
緊迫した空気が肌に刺さる。
しかし驚くべきことに、彼らの到着に兵士たちはまったく驚かなかった。
むしろ自然に迎え入れ、軍営の奥へと案内した。
「え? 俺たち、来るの知られてたのか?」
フィードが首を傾げる。
「……たぶん、ずっと前からこっちの接近を察知してたんだよ。そして支援組だって判断したんだろうね。」
とシャーが答える。「まあ、とりあえず入ろう。」
軍営に入ると、一人の軍官がすぐに駆け寄ってきた。
「皆さま、よくぞ来てくださいました。英雄の方々に感謝いたします。」
彼は深く頭を下げた。
「こちらは今、強化支援を切に必要としている状況です。敵軍がこの方面から大規模に押し寄せており、この戦線を何としても守り抜かなければなりません。」
軍官は急ぎながら、今の状況を説明し始めた。
「ご存じの通り、ほぼすべての前線が同時に襲撃され、多くの部隊が後退せざるを得ませんでした。現在、我々は半ば包囲された状態です。
――もしここの戦線が突破されれば、包囲網に大きな穴が開き、敵軍はそこから一気に流れ込んでくるでしょう。そうなれば、内外から挟撃される最悪の状況となります。」
重い声で続ける。
「現在、最も激戦となっているのは、十八時間前に戦闘が始まった“B地点”です。」
その言葉に、ニックスの心臓が小さく跳ねた。
――B地点……そこはナイトたちが向かった場所だ。
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<十八時間前・B地点>
ナイトら四人はB地点に無事到達し、騎士団副隊長と合流していた。
「副隊長、怪我の具合はもう大丈夫なのですか?」
ナイトが尋ねる。
副隊長はうなずく。
「今は問題ない。だが、確かに先の戦闘では深手を負ってしまった。ここから王都までの道は一直線だ。敵が最も初めに狙うのは、当然この地点になる。隊長がここにいないのは、すでに回り込んで挟撃の態勢を取っているからだ。」
その時だった。
「し、進路前方に土煙! 大量です!」
巡察兵の叫びが空気を震わせた。
サムロンは即座に魔力探査器を起動した。
だが次の瞬間――
パンッ!!
探査器が爆ぜ飛んだ。
「……!」
全員が息を呑む。
「どうやら……歓迎されていないようだな。」
副隊長は険しい表情で剣を抜き放つ。
「全軍、陣形を整えろ!! 迎撃準備!!」
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