第9話05一緒なら私たちは無敵です
まず初めに、ニンクスとフィードの名前を間違えて書いてしまいましたことをお詫び申し上げます。今後は二度と同じ間違いは犯しません読書体験に不便をおかけして申し訳ありません。
交わる拳、蘇る誓い
「……私たちは死ぬのか?」
崩れかけた意識の中で、フィードが絞り出すように呟いた。
「いやだ……まだ死にたくない……」
視界は霞み、全身が鉛のように重い。
異世界——夢にまで見た冒険の舞台。
「こんなはずじゃなかった……!」
フィードの拳が震える。
その隣で、ニックスが静かに微笑んだ。
「そうだな。本当は、もっと楽しいはずだったのにな。」
彼の声は、どこか懐かしい夕暮れの風のようだった。
「どうして僕たちは、他の人みたいに一瞬で最強になれないんだろうな?」
苦笑しながら、ニックスは空を仰いだ。
「フィード——僕も、かつて崩れそうになったことがある。でもな、大事なのは崩れた後も戦い続けることなんだ。」
彼の瞳には、幾度もの戦いを越えてきた意志が宿っていた。
「僕だって、何度も死にかけた。迷って、逃げたくなったこともあった。」
それでも、前を向くしかなかった。
それが、冒険者という生き方だから。
——フィードは、ふと尋ねた。
「……それで、君はなぜ冒険者になったのか?」
ニックスは少しだけ考えて、照れくさそうに笑った。
「僕か?」
「この理由は、偽善っぽく聞こえるかもしれないけど——」
「僕は他の人にヒーローだと思われるのが好きだからさ。」
ヒーロー。
その一言に、フィードの心はくすぐられるような感覚を覚えた。
「君らしいね。」
思わず、口元がほころぶ。
「だって僕たち——子供の頃からそうだったもんな。」
幼き日の記憶が、鮮やかに蘇る。
——小学校の頃。
『スーパー・ヒーローズ』
そう名付けた二人だけのチーム。
放課後、公園のジャングルジムを秘密基地にして、子供たちを守る「ヒーローごっこ」をしていた。
——中学、高校になっても、二人は変わらなかった。
どんな時も互いを支え合い、バカみたいに「世界を救う」と夢を語った。
「……思い出したよ。」
フィードが小さく笑う。
「僕たち、小学校の時からヒーローになりたかったんだ。」
その瞬間——
「おい、お前たち!」
死のコンクリートの声が、二人の間に割り込んだ。
「まだ終わらないのか?遺言を言ってると思ったら、なんて長いんだよ。」
フィードは、彼の言葉を完全に無視した。
今、大事なのはこれじゃない。
「——なあ、ニックス。」
「ん?」
「君は、家に帰りたいか?」
唐突な問いに、ニックスは少し考え——そして、ゆっくりと答えた。
「……うん、帰りたい。」
「でも、帰りたくないような気持ちもある。」
フィードは静かに頷いた。
「僕も、同じだ。」
ならば——
「その理由は、後でじっくり話し合おう。」
「でも、まずはこいつを倒さないとね。」
ニックスが拳を握る。
その拳を、肩まで引き上げた。
——それを見て、フィードも拳を握る。
「……覚えているか?」
問いかける。
ニックスは、確かに頷いた。
「覚えている。」
二人の拳が、ゆっくりと重なり合う。
その瞬間——
沈みゆく夕陽が、二人の拳を包み込んだ。
「ありがとう。」
フィードが言う。
「おかげで元気が出たよ。」
「うん。」
ニックスが微笑む。
「おかえり。」
オレンジ色の光が、二人の拳を通り抜けた。
そして——
新たな戦いが、始まる。




