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第2話 02あなたは私がタイムトラベラーであることを知っています。



「ふん、そういうことか。」


ニックスは低くつぶやいた。


しかし、その直後に思考が一瞬止まり、すぐに驚愕が押し寄せる。


「……ちょっと待て!」


彼は勢いよく顔を上げた。


「普通、もっと驚くところじゃないか? もし本当に別の世界から来たっていうなら、そんなに冷静でいられるのか?」


少女はその問いに対して、わずかに口元を緩め、冷静な眼差しで答えた。


「もし百年前のことだったら、確かに驚くべきことだったかもしれないわ。」


「でも今は……それほど珍しいことではないの。」


ニックスの瞳が大きく見開かれる。


「まさか、この世界には俺みたいな“転生者”がたくさんいるってことか?」


少女は軽く首を横に振る。


「そういうわけではないわ。転生者は極めて稀よ。」


「ただ、この世界の人々は、すでに『転生者』という存在を知っている。」


少女の目に、わずかに影が差す。


「百年前——ある一人の転生者が、この世界に現れたことがきっかけでね。」


彼女の表情は静かなままだったが、その声の奥には、説明しがたい感情が滲んでいた。


「彼の到来は……混沌をもたらしたの。」


「当時、この世界は大きな混乱と不安に陥った。」


「だからこそ、今この世界の人々は転生者に対して、極めて慎重であり、そして……正直に言うと、信用していないの。」


静寂が流れる。


そして、少女はニックスを真剣な眼差しで見つめ、はっきりと告げた。


「だから、私たちは君の存在を外の世界にはしばらく伏せておくことに決めた。」


「他の人に、君がここにいることを知らせない。」


「今でも混乱が続くこの世界を、さらに手に負えないものにしたくないから。」


ニックスはその言葉に圧倒され、混乱した表情で頭を抱えた。


「待て……情報が多すぎる。」


「別世界って、本当にこんなに面倒くさいものだったのか……。」


少女はわずかに眉を上げる。


「別世界?」


「い、いや、なんでもない。」


ニックスは苦笑し、内心でため息をつく。


(……まったく、なんでこんなことになってるんだ。)


だが、不意に少女の顔を見つめ、ぼそっと呟いた。


「ただ……君に似ている人のことを思い出しただけだ。」


少女は彼の言葉を聞き流すように、そのまま話を続ける。


「君の正体が秘密である以上、私たちも他人には知らせられない。」


「もちろん、それが問題を引き起こすこともある。多くの人が君の素性を疑うかもしれないわ。」


ニックスはこめかみを押さえ、ぼやくように言った。


「……そこまで徹底する必要があるのか?」


少女の瞳が鋭く光る。


「十分に必要なことよ。」


「私たちにとって、転生者は魔物とほとんど変わらない。どちらも制御不能な存在だから。」


その言葉に、ニックスの口元がわずかに引きつる。


「そんなに扱いが悪いのか……。」


彼は苦笑しながら、肩をすくめた。



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