デブスとは、言ってくれるじゃないクソ王子!
クローディアは流行にのっとったくるくるとした髪をなびかせて、かつかつとパーティー会場から続く廊下を歩いていた。
第二王子であるフィランダーの婚約者として参加しているのに、クローディアの隣には彼はおらず誰と会話をするときにも一人ぼっち。それでも別に寂しいとか悲しいとかそういう事は思わなかったが、会場を出て探しに来た。
なんせ毎度のことである。
いつものようにふらりといなくなった彼に呆れかえりながらも、今日こそはその居場所を突き止めてやるとあたりを見回しながら進んだ。
王宮の廊下は広く、普通の屋敷の数倍の幅がある。もちろんパーティーの招待客たちも居て、窓の外に続くバルコニーでロマンティックなムードを楽しんだり、廊下で出会う人と偶然の再会を楽しんでいたりする。
大理石の大きな柱が規則的に並び、その廊下に沿うようにある半個室のようなカーテンに仕切られたプライベートな空間もある。
中にはソファーが置かれ小さなテーブルがあり、劇場のボックス席のようになっている。
速足でフィランダーを探して通り過ぎていくと、ひときわにぎわっている席があり、そこからは、彼の大きな声が聞こえてきた。
どうやら昼時だというのに酒を飲んでいる様子で声が異様に大きい。
近づいてみれば周りの貴族たちはその席を避けるようにして近寄らず、内容を聞いてクローディアもその意味を理解した。
「あんな豪胆な婚約者などまったくありえん。本当にふてぶてしく可愛げの欠片もない」
どうやら悪口、それも、このクローディアの悪口を楽しげに言っている様子だった。
「其方たちもクローディアの隣に行ってみろ、騎士団長のような圧を感じるぞ」
クローディアは騎士の家系であるキングスコート公爵家の出身だ。そして今の騎士団長は姉であるドロシアがその任に就いている。
クローディアも剣はキングスコートに生まれた時点で仕込まれている。そこらの女性とは違った、たくましい女なのだ。つまりはそのことを詰っているらしい。
「それにどうしてあんなにドレスが似合わないのだ。他の美しく可憐な乙女たちと違い、私は外れを引いた」
「そんなことありませんよ、殿下」
「そうです。あまり悪く言っては可哀想でありませんか」
ともにいるであろうフィランダーの友人たちの声が聞こえていた。しかしかばっているようだが、どこか馬鹿にしている様子で、クローディアはその場で頬を引きつらせた。
「あれでも頑張って女性らしくしようとしているから健気という物です」
「そうです。ふとましやかなお姿は健やかでよいではありませんか」
「何を言ってる、あんなもの抱かれれば私がつぶれてしまうわ!」
「ははっ、御冗談を」
からからと笑い声がして自分の腹を見た。ふとましやかとはいうが脂肪などついていない。
必要な筋肉がついているだけだ。それに勝手に大きくなった胸元が流行のドレスの大きなリボンにおおわれて、さらに大きく上半身にくびれがなく見えてしまっている。
ぐっと拳を握って我慢するが、いい加減暴走しそうであった。
「まったく、あんなデブで、不細工な女は何と言おう。女性の繊細さのかけらも持ち合わせていない、ふとましく豪胆な女はそういない、特に今日のドレスは酷い、あれではまるで巨大な樽だ!」
「他の女性たちは華奢な肩が強調されて愛らしいですのに、クローディア様だけは流行のフリルのついたケープが歴戦の猛者の羽織るマントのようでした」
「貫禄がおありですよね。大きな体をされてますから」
……この、者ども言わせておけば。
こらえながらもぐぐっとカーテンを掴んで堪える。
似合わない格好をしているのだって、流行をまったく取り入れないなど貴族女性の風上にも置けないと言われて、仕方なく合わせているのにこの言われようでは腹も立つ。
たしかにクローディアは身長も高く体格も女性にしてはいい。
騎士をやっている姉の影響でとても健康に力強く育った。
しかし、それだってきちんと女性としての範疇であり、男性できちんと体をうごかし戦闘できる者ならクローディアに抱きしめられたら潰されそうなどという発想は出てこない。
ただフィランダーがまったく剣術も真面目に受けずに、日がな一日ゲームや酒に興じている王子であるからそんな話になっていた。
特に最近の流行は、女性の繊細さ脆さを前面に押し出すために対照的に派手な装飾をつけて、ケープをさらに羽織るようなことになっている。
髪をくるくるにまいてボリュームを出すのだって、クローディアは自分に似合わないのを知っていたが、まさか要望に応えただけでこんな風に言われたらたまったものではない。
「……っ~」
そう思うと今までの彼の行動が次々と思い出されて、怒りが暴発していく。
陰でクローディアの事を悪く言っているのを聞いたのだって数知れず、彼の非を指摘すると手をあげられそうになったこともある。
まぁ、すべて躱すかいなすかしたが、良い婚約者ではない事は確かだ。
これまで親に決められた婚約だからと必死に我慢してきたが、こんな場所で婚約者に聞かれる可能性も考えずに、大きな声で他人をあざける姿はクローディアに後戻りを許さなかった。
「どうせ、デブでブスな……そう、デブスなのだから、大人しく粛々と私の言う事を聞けばいいというのに」
……誰がデブスですって?
カーテンを引いて開き、鬼のような形相で怒りそのままにクローディアは口を開いた。今までは、綺麗な言葉で優しく彼の事をいさめてきたが、今日ばかりはそうもいかず、思ったままの言葉が滑り出た。
「デブスとは、言ってくれるじゃないクソ王子!!」
パーマを掛けたようなくるっくるの髪が視界の端でばねのようにびょんと踊って、一歩歩みを進めるたびにドレスの重さがヒールにかかる。
「手足だけはひょろひょろがりがりで、鍛錬もせず菓子ばかり食べて、贅肉を蓄えた丸い腹を持つ貴方になんていわれたくないわ!」
こんなに重たい物を常に身に着けて、コルセットで締め上げ体が悲鳴をあげているのに、太るからと碌な食事ができない令嬢たちの事を考えた。
こういうまったく不健康な男たちが、女性の良し悪しを自分たちの指標だけで考えて、美しさを決めるから彼女たちは貧血に苦しみ栄養失調にあえいでいる。
そんな事とも知らないで、さも自分たちが正義だと言わんばかりにたくましく健康な女を笑い、罵るその姿はまさしく悪魔だ。女性の敵だ。
「健康なことは何よりの美しさだと、私は思いますの。それなのに自分たちの不健康に変に太った体に合う女でないからと笑われる筋合いはないわ」
手足は細いのに腹回りだけは一人前、不健康そうな肌色を見れば将来何かしらかの病気にかかることは明白だ。
「結婚なんて考えられませんわ。婚約破棄を申し入れさせてくださいませ!」
大きな声で宣言した。
廊下に響き渡るような大声と、矢次早に言われたセリフにフィランダーは呆然としていた。
その隣に居る数名のフィランダーの友人たちも酒を片手に硬直していた。
しかし、すぐにフィランダーは言われたことを理解してカツカツと歩み寄ってきてクローディアのケープの胸元を掴んで引き寄せた。
「なんだと、生意気な」
「生意気はどちらよ。このクソ王子!」
「其方、二回も私のことをクソなどといったな!」
「いったわよ!」
ガンをつけるように睨みつけられたが、その強く胸元を引かれた反動を使って、クローディアは歯を食いしばって頭突きをした。それに「がっ」と声をあげて彼は後ろに後退する。
「あら失敬、よろけてしまいましたわ」
そんな彼に悪びれもなくクローディアはそう口に出して、それから、優雅にほほ笑んだ。
強烈な頭突きにくらくらとしているフィランダーはそのままテーブルに足をもつれさせて突っ込んでいって、ガシャンと音を立てて倒れこむ。
「殿下っ!」
「フィランダー様」
すぐに彼の友人たちがフィランダーに手を貸したが、クローディアの覇気に全員が委縮していて、誰もクローディアからフィランダーを守ろうとはしなかった。
しかし、フィランダーだけはクローディアに怯えなかった。
王子として高く高く育ったプライドがクローディアに負けるという事を許さず、びしっと指をさしてクローディアに告げるのだった。
「そ、其方とは、婚約破棄だ!! こんな凶暴な嫁など貰えるか化け物め!! 其方は女でもなんでもない!!」
「婚約破棄上等ですわ。金輪際、私に話しかけないでくださいね」
始めに婚約破棄を言い出したのはクローディアだったが、彼はまるで自分から振ったのだというようにクローディアにそう突き付けてきた。
それにまったくあっさりと答えて、クローディアは踵を返す。背後からたくさんの罵り文句が聞こえてきたがもはや耳に入らない。
これ以上彼と話をしていたらとんでもない事をしてしまいそうだったので、聞かないようにして足を動かした。
視界の端で黒髪がばねのようにビヨンと揺れてやっぱりこれ滅茶苦茶じゃまだなと思った。
━━━━ということがあったんですの!」
クローディアはすぐに王宮から王都にあるキングスコート公爵邸に帰宅した。それから、事のありさまを休日で書斎にこもっていた姉であるドロシアに話した。
彼女はクローディアとよく似た黒髪をしていて、クローディアよりもたくましい腕と胸筋を持ったとても健やかな女性だ。その後ろには彼女の従者として控えているレナルドの姿もある。
レナルドはクローディアと年の頃は同じでまだ若い騎士だが、姉に剣技を認められ特別に指導するために連れているらしい。
たまにこうして青年を連れているので珍しい事ではない。それよりも今日の出来事を姉に話し、どうにかうっぷんを晴らそうとしてたクローディアにドロシアは冷ややかな目線を向けていた。
「元々あんな最低な人、私だっていやだったんです、それをここまで耐えたというのにっ」
「……」
「何とか言ってくださいませ姉上!」
怒りに震えて勢いのまま言うクローディアに、ドロシアは開いていた本からちらりと視線を移して執務机から顔をあげる。
「私に何を言えというのだ。次の婚約相手を早く探し始めろとでも助言すれば満足か? クローディア」
「そ、れは、いいんですのもう。家格が低い人だろうが私は人柄を見て結婚相手を決めたいですから」
「では、ほかに何を望むのだ」
「ですからっ、ありえないと思いませんこと? デブスと仰ったのよわたくしの事!」
「……」
「あんな何も鍛錬もせずに偏った食事でできたやせ細った体で!」
カッとなってクローディアは大きな声を出した。それにドロシアの眉がピクリと動いて肉食獣のような鋭い瞳をクローディアに向けた。
椅子をけ飛ばすようにして立ち上がり、クローディアを見下ろして腕を組んで美しい黒髪をなびかせた。
「では同じではないか! 今、こうして私にフィランダーの悪行に愚痴をこぼしてるお前と同じではないか!」
クローディアと同じだけの声量で勇ましく指摘する。
「それを他人には許さず、自分だけは許され認められようなどとは言語道断!」
ドロシアの言っていることは正論であったし、もちろん間違いではなかったが、自身の仲間だと思っている人に同調してもらって気持ちを収めようとするのだって人として当たり前の手段のはずだ。
しかし、ドロシアは少々融通の利かないタイプだった。
そしてそんなドロシアに育てられたクローディアもその彼女の言葉にハッとして考えた。
……フィランダーと同じ……。
「愚痴などこぼさず態度で見返せ! 見苦しいぞ! クローディア」
その言葉に酷く感銘を受けて、クローディアはそうだ、その通りだ! と思った。
自分は怒っていた。それは、彼の言う事を聞いてもまったく認められず馬鹿にされ仲間内で笑われたことで、これは酷い屈辱だった。
ならばこそ、自他ともに認める素晴らしい女になって見返す以外にはこの怒りを収める方法はない。
「ま、そのあたりで。ドロシア様、クローディア嬢も年頃の女性、何も言えずに黙って帰ってくるよりも、こうして怒っていた方が十分健全だって」
そんな事とは知らずに常識人のレナルドは、頭の固いドロシアに怒られたクローディアをフォローしようと口をはさんだ。
しかし、クローディアは聞いていなかった。
「……そう、ですわ。あんな男後悔させてやる以外に、この怒りを収める方法はありませんわ」
「そうだろう、クローディア、お前はこんなとこで油を売っている場合ではない!」
「ええ! 姉上っ、私方法を間違えていましたわ、堪えるのではなく見返すのです!」
「そうだそれでこそキングスコート公爵家の娘だ!」
二人は意気投合とばかりにガシッと握手を交わし、クローディアは瞳に復讐の炎を燃やしてギラギラと瞳を輝かせた。
それを見ていたレナルドは、なんだか釈然としない気持ちだったが、クローディアが立ち直ったのならそれでいいかと思った。
しかし、以後ドロシアの命令でクローディアのサポートにつく羽目になり、馬車馬のように働かされ、もう少し強くフォローをしておくべきだったと人知れず後悔したのだった。
クローディアとフィランダーの婚約破棄が決まって季節が二つほど巡ったある日のパーティーでの事。クローディアとドロシアはそろいのドレスを身にまとってパーティーホールの一角を占領していた。
周りには、キングスコート公爵家の派閥の女性が優雅に佇み、会話に花を咲かせている。
もちろん同じ派閥の女性は、全員同じ型のドレスを身にまとい、髪を美しく結い上げていた。
「反応は上々だな、クローディア」
普段の動きやすい騎士団の制服を脱いでドレスを纏ったドロシアは妖艶な雰囲気を纏っている。元から男勝りな人だが、女性としての魅力がまったくないというわけではない。
こうして着飾れば、男の目線を釘付けにすることなど容易だった。
「ええ、姉上。やはり私の目に狂いはありませんでしたわ」
現に、騎士団とあまり密接にかかわっていない、知らない顔の男たちもどのように口実を作って話しかけようかと考えながらこちらに視線を送っている。
この反応を見るだけでクローディアの復讐は成功と言っていいだろう。
「ああ、お前は自慢の妹だ」
ドロシアはそういって、周りにいる女性たちにも視線を向けた。
すると彼女たちもクローディアに好意的な目線を向けてにこりと微笑んだ。普段は眼光鋭く魔物を切り捨てる立派な騎士たちだが、彼女たちもドレスの最近の流行に辟易していた者たちだった。
「私からも礼を言う。騎士服以外に着るものがない運命にあると思っていただけに爽快な気分だ!」
「そうだ、クローディア嬢、是非これからも新たな流行を作り出してほしい」
軽快に彼女たちはきびきびとヒールでクローディアの方へと寄ってきて気さくな笑顔を向けた。
どの女性たちも胸を張り自信を持った様子でクローディアにそれぞれ声をかける。
それをみて体格のいい女性たちが出来るだけ小さく細くみえるようにと肩をすぼめていたことを思い出して、本当にこうして正解だったと思う。
もともとは、クローディアは努力によって、小さな女性のように体を細くし血の気の引いた色白の肌を作り出そうとしていた。しかし、その努力のさなかに彼に怒った時のことを思い出した。
彼らに合わせては、結局、不健康になり美しさは失われる。それならばと新たなる流行を生み出す選択をした。
女性の服飾について学び、昔の流行であったものも取り入れて新しいスタイルのドレスを作り上げた。
ゴテゴテとした襟首の装飾を大胆に外し胸元はスッキリとさせる。袖は短く肌が露出してしまう分、長手袋をつけて、デブなどと言わせないために体のラインをはっきりと出した。
腰までは装飾を少なく一番細い部分から下は従来通りクリノリンで膨らませる。しかし、あまりに大きくするのではなくある程度に留め、ロングトレーンで存在感を出す。
この部分に高級な布を使うことによって、フリルやレースを多用するドレスではなくても質素だと思わせない。様々なことを考えてどうにか形にしたクローディアの力作だ。
自分に似合うだけでなく、流行を作り出すのなら、姉やそのほかの女性にも似合うようにと考えただけあって、皆に喜んでもらえることこそ何よりうれしかった。
「ありがとうございますわ。そういっていただけるだけで頑張った甲斐があるというものです」
にっこり笑って、何かと動いてくれたレナルドに視線を向ける。
彼は相変わらず、平然としていて、このドレスにも似合ってると一言言っただけなのだが、内心はこうして流行を作り出すことに成功して喜んでくれているのだろうか。
「レナルドもずっと協力してくれてありがとう、私もうこれで誰にデブスなどと罵られても怒りませんわ」
彼の手を取ってそういうと、その言葉を不思議に思ったのか首を傾けて聞いてきた。
「どうしてだ?」
「だって、見当違いの悪口など聞くに値しない粗末なものですもの」
「なるほど。……やっぱりドロシア様の妹だな」
しみじみとレナルドはそんな風に言って、ふとクローディアの後ろに視線をやって驚いた。
その視線を追うようにして振り返れば、あの日とは違って酒に酔っていないらしいフィランダーがいる。
周りには友人もとい、取り巻きを連れていて、振り返ったクローディアに偉そうに声をかけてきた。
「クローディア、随分と見違えたじゃないか」
彼は褒めるようにそう口にする。妙な言葉にクローディアは顔を顰める。
「婚約破棄され、捨てられたことをばねに美しい女になったのだな」
……私自身は何も変わっていない、ただドレスを変えただけですのに。
「合格だ! これからも私の妻になるために精進するんだぞクローディア、私の愛おしい━━━━
「勿体ない」
彼の言葉を最後まできかずにクローディアは冷たい声で言った。
こんな女性を形だけでしかとらえていない生き物の言葉を最後まで聞く必要性が感じられなく口にした。
それに若干、驚いた様子だったがフィランダーは空気も読めずに続けた。
「そうかもしれない、其方のような図太い女性はこの繊細な私には━━━━
「フィランダーのような男に、この美しい私はもったいないですわ」
「……な」
「不釣り合いだと言っているのよ。クソ王子」
そして真顔でそう宣言した。それに、背後で姉や女性たちがハハハと軽快な笑い声をあげた。
「……」
言葉を遮られ、言われた言葉にフィランダーは目を見開き、それから、笑われた屈辱を晴らすべくクローディアに手を伸ばした。この間は頭突きを喰らってしまったので、今度は殴りつけてやろうと手をあげた。
しかし、パシッと軽くつかまれて、肩を押されてよろめく。
「失礼、令嬢に手をあげるなど騎士として見ていられませんでした」
クローディアは簡単にそんなものをよけられたが、わざわざレナルドが庇ったのだ。
同じ男性に威圧され、騎士の矜持を持ち出されると分が悪かったらしくフィランダーはレナルドを睨みつけてから、踵を返して捨て台詞を吐いて去っていく。
「お前のような不細工、今後婚約できると思うなよ! 私に屈辱を与えたこと後悔するはずだ!」
それにもまったくクローディアは心を動かさずに鼻で笑った。
……負け犬の遠吠えは見苦しいですわ。
そう考えた。しかし、隣にいたレナルドは彼の捨て台詞に対して、クローディアに言う。
「……俺は、クローディア嬢は……とても健康そうで美人だと思う。結婚に困ることはないだろ」
フォローのつもりか何なのか、その言葉を聞いて反応したのは、姉と、近くにいた女性騎士の数人だった。
「まさか狙ってたな。レナルド」
「お前に団長の妹が釣り合うか~?」
「はっ、まだまだ妹をやるには実力が足りないな」
彼女たちの煽りにレナルドははぁっとため息をついて、厳しい顔をする、しかしその頬は少し赤らんでいた。
「実力不足など承知してる。それより他人の恋路を茶化すなって」
それだけ言って彼はカツカツと歩いてその場を去っていく、それにクローディアは彼らのやり取りが面白くて少し笑って、彼女たちにレナルドの事を聞いた。
まずは知ることから始めようと思う。そうして今日は復讐の終わりと、新たな恋の始まりの日になったのだった。