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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

婚約破棄を予知したので、腐りきった祖国なんか捨てて、他国で幸せになってやる1

作者: 神無月蓮晃

以前投稿した短編を改訂しました。

「卒業まで残り一ヶ月か」

卒業したら、ホマと結婚しなければならない。

私は聖国での聖女教育を終えて、数年前に祖国へ帰国した。

そして第一王子ホマとの婚約を強要されてしまった。

ホマは性格が最悪で、成績も最低で、女にだらしない馬鹿な男だ。

あの馬鹿と結婚なんか絶対にしたくないのに、容赦なく時間は過ぎていく。

あの馬鹿が病死か事故死すれば、結婚しなくて済むのに。

いっそのこと私自身で始末しようかな。

私は暗殺専用のスキルを複数有している。

相手の体内に毒を直接注入するスキルで毒に苦しむホマ。

相手の心臓を停止させるスキルで瞬殺されるホマ。

相手の身体全ての神経を麻痺させるスキルで徐々に麻痺する恐怖に怯えるホマ。

どのように始末してあげようかな。

「おっと、不味い。興奮し過ぎた」

あの馬鹿が死ぬ姿を妄想して、興奮し過ぎてしまったので、冷静になろう。


もう深夜か。

悩んでも仕方ないから、もう寝よう。


「うう~ん」

『私は偽聖女カオリとの婚約を破棄をして、真の聖女ラセツと新たに婚約を結ぶ』

『そうです。私が真の聖女です』

ラセツが自分が真の聖女だと言い出した。

『更にカオリは国を欺いた罪で離宮に監禁して、聖女の務めに従事させる』

何故かあの馬鹿王子に偽聖女呼ばわりされて、婚約破棄と聖女の務めに従事させるという、あり得ないことを言われた。

『何を言っているんですか。私は本当に聖女ですよ』

『嘘を付かないでよ。聖女は私よ』

ラセツはあくまでも自分が聖女だと言い張った。

『カオリ、見苦しいぞ。婚約破棄と聖女の務めは既に決定的した事だ』

『どうして私が婚約破棄されて、聖女の務めに従事させられるのよ。絶対に納得出来ないわよ』


「ふざけるな」

頭にきて、思わず叫んだ。

「あれ、ベッドの上?」

何故か自室のベッドの上だった。

「もしかして今のは予知夢?」

どうやら予知夢だったようだ。

私には時々予知夢を視るという、誰にも知られていない秘密がある。

今視た予知夢は来月の卒業パーティーで婚約者のホマ王子に偽聖女の汚名を着せられて、婚約破棄されて、離宮に監禁されて、聖女の務めに従事されられるという最低最悪なものだった。

冗談にしても、たちが悪すぎるじゃない。

そもそも偽聖女に聖女の務めを従事させるなんて、完全に矛盾しているじゃない。

ホマって本当に馬鹿じゃないの。

あんなのが第一王子だなんて、この国もおしまいね。

兎に角こんな無茶苦茶な未来なんか、絶対に受け入れられるか。

その前にこんな腐りきった国なんか捨てて、他国で幸せになってやる。

それともあの馬鹿を本当に始末するか。

「う~ん・・・・・・」

始末するのはリスクが高いから、めておこう。

国外逃亡は転移が手っ取り早いけど、残念ながら隣国である聖国にしか行った事が無い。

流石に聖国は不味い。

面倒だけど、完璧な逃亡計画を立案しよう。


第一に聖国とは逆方向にある辺境の結界を一部だけ解除して、魔物の侵入を誘発する。

第二に結界の調査を願い出て、辺境行きを認めさせる。

第三に辺境の結界を修復して、周囲の連中を油断させる。

第四に疲れきった芝居をして、一人っきりで休みたいと懇願する。

第五に油断している隙を突いて、急いで他国領に駆け込み、逃亡する。

必死に逃亡計画を練り上げて、完璧な計画に仕上げた。

後は実行あるのみ。


辺境の結界を一部だけ解除した。


「聖女カオリ、辺境の結界が破られて、魔物が侵入したとの報告があったぞ。どういう事だ」

「現地で調査しなければ、原因は解明出来ません。私が辺境に赴く事をお許し下さい」

「分かった。許可しよう」

「ありがとうございます。必ず原因を解明して、結界を修復してみせます」

辺境行きを認めさせた。


「結界の一部が破損していますので、直ちに修復します」

結界の修復を開始した。

「結界の修復が終了しました」

結界の修復が終了したと、周囲の連中を油断させた。


「疲れましたので、一人っきりで休ませて下さい」

疲れたので、一人っきりで休みたいと懇願した。


油断している隙を突いて、急いで他国領に駆け込み、逃亡した。


「逃亡に成功した」

計画通りに国外逃亡に成功して、歓喜の声を上げた。

後は遠方の他国に向かうだけだ。

祖国に別れを告げるテーマソングを歌いながら、遠方の他国に向かった。

混乱させる為に国内全ての結界を解除してやった。

後始末はラセツがしてくれるから、問題無い。

問題が発生しても、私にはもう関係無い。

勿論責任も取らないから、自分達で解決しなさい。


「国内全ての結界が破られて、魔物が侵入しただと。聖女カオリは何をしている」

「・・・・・・行方不明です。おそらく国外に逃亡したと思われます。聖女カオリの部屋に置き手紙がありました」

側近が置き手紙を国王に渡した。

置き手紙には婚約者のホマ王子がカオリに偽聖女の汚名を着せて、婚約破棄して、真の聖女と言い張るラセツと新たに婚約を結んで、カオリを離宮に監禁して、聖女の務めに従事させる事を画策しているので、遠方の他国に逃亡しますと書かれていた。

「ホマを直ちに呼び出せ」

激しい口調で直ちにホマを呼び出せと、側近に命じた。


「父上、何の用ですか」

ホマが謁見室に入ってきた。

「この手紙を読め」

「この手紙は何ですか」

「早く読まんか」

「は、はい」

ホマは急いで手紙を読み、顔色が真っ青になった。

「手紙に書かれている事は事実か」

「・・・・・・」

ホマは無言だった。

「分かった。事実なのだな。衛兵、ラセツを連行してこい」

国王はラセツの連行を衛兵に命じた。


「陛下、何で私が連行されたのですか」

ラセツが謁見室に連行されてきた。

「国内全ての結界が破られて、魔物が侵入している。お前は真の聖女だと言い張っているそうだな。それならば結界の修復を命じる。直ちに結界を修復しろ」

「・・・・・・出来ません。結界の修復などカオリにしか出来る人は居ません。私には無理です」

ラセツは結界の修復が出来ない事を白状した。

「聖女なのに何故出来ない」

「私は聖女ではありません。王太子妃になりたくて、聖女と言い張っていました」

遂に偽聖女だと白状した。

「つまりお前は偽物の癖に、本物であるカオリに偽物の汚名を着せたのだな」

「申し訳ございません。謝罪致します」

「愚か者。既に謝罪で済む問題ではない。カオリが我が国を見限り、他国に逃亡したのだぞ」

「う、嘘ですよね。悪い冗談を言わないで下さい」

「嘘や冗談でこんな事が言えるか」

「・・・・・・」

ラセツは絶句して、何も言えなくなった。

「よく分かった。衛兵、ホマとラセツを地下牢に投獄しろ」

「お赦し下さい。父上」

「地下牢なんて、嫌です」

二人は見苦しく、国王に赦しを懇願した。

「目障りだ。さっさと連れ出せ」

国王の命令によって、ホマとラセツは地下牢に投獄された。

「ルコを直ちに呼べ」

国王は直ちにルコを呼べと、側近に命じた。


「父上、お呼びですか」

「この手紙を読んでくれ」

「はい」

ルコは手紙を読み、眼を見開いた。

「これは事実ですか」

「・・・・・・」

国王は無言で頷いた。

「国外に逃亡した聖女カオリを探し出して、我が国に連れ戻せ。お前なら可能だろう」

国王はルコにカオリの捜索を命令した。

「畏まりました。必ず聖女カオリを探し出して、連れ戻してみせます」

私には父上しか知らない秘密がある。

それは嗅覚が異様に鋭い事だ。

カオリの麗しい体臭は完全に記憶しているので、追跡は容易だ。

今までは兄上の婚約者だったので、カオリには手出し出来なかったが、兄上が愚行を犯してくれたので、遠慮する必要は無くなった。

「絶対に探し出して、私の妃にしてみせる」

ルコはカオリの体臭に魅了されて、以前から横恋慕していた。


「全員揃ったな。直ちに出発する」

ルコは数名の護衛と共にカオリの追跡に出発した。


「此処まで逃亡すれば、一安心ね」

隣国の辺境の町まで逃亡した。

まもなくこの国からも出国出来るので、そうなれば見つかる可能性が低くなる。

「取り敢えず昼食にしようかな」

おしゃれなカフェに入り、ランチセットを注文した。

「さてと腹ごなしに町でも散策しようっと」

腹ごなしに洋服店や宝石店を見て回った。


「遂に見つけましたよ」

「殿下?」

何故かルコが数名の護衛と共に、私の目の前に現れた。

「どうして殿下が他国に居るのですか」

「勿論カオリを連れ戻す為です」

どうやら私を連れ戻しに来たらしい。

「お断りします」

「拒否しても、無駄です。貴女を連れ戻さないと、我が国が魔物に滅亡させられてしまいます。そもそも貴女が結界を解除したのが、悪いのですよ」

「結界ならラセツに張り直させれば、良いではありませんか」

「あの偽聖女にそんな能力はありません」

「偽聖女?ラセツは真の聖女ではないのですか」

「あれば愚かな兄上の戯言です」

予想はしていたが、本当に偽聖女だったらしい。

「分かりました。それでは結界を遠隔操作で張り直せば、見逃してくれますか」

「遠隔操作で結界が張り直せるのですか」

「私なら可能です。もう一度聞きます。見逃してくれますか」

「残念ですが、駄目です。貴女には私の妃になってもらいます」

「妃?六歳も年上の私がですか。正気ですか。殿下」

ルコがとんでもない発言をした。

「勿論正気です。実は以前から貴女に恋い焦がれていました。是非とも私の妃になって下さい」

更に告白されてしまった。

「・・・・・・」

私は困惑して、呆然としてしまった。

「プロポーズを受け入れてくれますか」

「お断りします。年下は好みではありません。それでは逃亡させて頂きます」

我に返って、プロポーズを拒否した。

「逃がしませんよ。お前達、カオリを拘束しろ」

護衛達が私を取り囲んだので、仕方なく誰にも知られていない奥の手を使う事にした。

【転移】

国王の謁見室に転移した。

「・・・・・・カオリが消えた」

「「「「「・・・・・・」」」」」

ルコと護衛達は呆然とした。


「何者だ?」

「陛下、私です。カオリです」

「カオリなのか?」

「急いでいるので、簡潔に伝えます。結界は私が定期的に遠隔操作で張り直して、魔物の侵入を防ぎます。代償として、自由行動と今までと同額の報酬をを要求します」

「う~む・・・・・・」

考え込む国王。

「分かった。その要求を承認する」

「それでは結界を張り直します」

【結界】

「結界を張り直しました。これで魔物の侵入は防げます」

「助かった。約束の報酬だ」

「ありがとうございます。それでは失礼します」

【転移】

ルコの居る場所に転移した。

「殿下、陛下から自由行動の承認をもらいましたので、私の捜索はめて下さい。そうそう殿下にテーマソングを贈ります」

プロポーズを断るテーマソングを歌ってあげた。

「何だ。この変なテーマソングは」

「それでは失礼します」

「待ちなさ」

【転移】

ルコの言葉が終わるのを待たないで、昨日泊まった宿屋のある町に転移した。

ついでに路銀を奪ってやった。


「・・・・・・」

ルコは再び呆然とした。

「殿下、陛下からの通信が入っています」

「分かった」

ルコは我に返って、通信に出た。

「私です」

「カオリのおかげで、結界の件は解決した。直ちに帰国しろ。以上だ」

「お待ち下さい。お願いがあります。私はカオリを妃に迎えたいので、このまま追跡を続行させて下さい」

「カオリを妃に迎えたいだと。彼女はお前より六歳も年上だぞ。本気なのか」

「勿論本気です」

「う~む・・・・・・護衛達は引き上げさせるが、それでも構わないならば、許可しよう」

「構いません。これは私の我が儘ですので、私一人で追跡を続行します」

「分かった。そこまでの覚悟があるなら許可しよう。だがカオリを口説き落とすのは大変だぞ」

「分かっています」

「健闘を祈る」

父上からの励ましの言葉を最後に通信は切れた。

「お前達は帰国しろ。私はカオリの追跡を続行する」

「畏まりました。我々も御健闘をお祈り致します」

「ありがとう」

ルコは一人でカオリの追跡を続行しようとした。

「申し訳ありません。路銀を紛失しました」

「カオリの仕業か。あの腹黒聖女め」

カオリに路銀を奪われたみたいだ。

仕方なく護衛と共に帰国した。


港町で一泊して、早朝から町を散策した。

多分ルコは諦めていないだろう。

しかし船に乗って、遠方の国まで逃亡すれば、ルコに見つかる可能性は完全に無くなるだろう。

「そろそろ朝食にしようかな」

カフェに入り、モーニングセットを注文した。


「お嬢さん、僕と一緒にお茶しませんか」

「お断りします」

馬鹿がお約束のナンパをしてきたので、速攻で拒否した。

「そんな冷たい事を言わないで下さいよ」

拒否したのに、しつこく誘ってくる。

【睡眠】

鬱陶しいから、睡眠のスキルで眠らせた。

「・・・・・・」

ナンパ男は直ぐに眠りに堕ち、無言で倒れ込んだ。

「大丈夫ですか」

介抱する振りをしながら、迷惑料として財布を頂いた。

そのまま治療院に運ばれたので、静かに朝食が取れた。


「やっと追いついた」

朝食後に再び町を散策していると、ルコに見つかってしまった。

どうして簡単に居場所を突き止めるんだろうか、それに何故か護衛が一人も居なかった。

「殿下、いい加減に諦めて下さい。それと何故護衛が一人も居ないのですか」

ルコに諦めてくれと説得して、護衛の事を質問した。

「嫌だ。絶対に諦めるもんか。護衛が居ないのは、私の我が儘に巻き込む訳にはいかないから、先に国へ帰した」

我が儘だという自覚はあったのか。

「我が儘だという自覚があるなら、諦めて下さい」

「絶対に嫌だ」

「殿下なら私より若い女性が選び放題の筈なのに、どうして年上の私に拘るのですか」

「・・・・・・そ、それは初恋の人だからだ」

「それだけですか」

何となく他の理由がありそうだ。

「それだけだ」

「本当にそれだけですか」

「しつこいぞ」

「分かりました。それでは確認させて頂きます」

「確認?」

【真実の証言】

とっておきのスキル真実の証言をルコに掛けた。

「殿下に質問します。私に拘る理由は本当に初恋だけですか」

「違います。本当の理由はカオリの麗しい体臭に魅了されているからです」

「貴方は変態ですか」

想定外の答えが返ってきた。

まさかルコが変態だったとは、意外だった。

「殿下に質問します。私を居場所をどうして簡単に突き止められるんですか」

「私はカオリの体臭を記憶しているので、匂いを辿って、突き止めました」

「貴方は犬か」

まさか私の体臭を記憶していて、匂いを辿っていたとは、本当に想定外だった。

今後は身体を念入りに洗って、香水を多めに付けようと、心に誓った。


「・・・・・・死にたい」

真実の証言の効果が切れて、ルコは自我を取り戻した。

そして自分の性癖を私に知られて、落ち込んだみたいだ。

「仕方ないですね。元気の出るテーマソングを歌って差し上げます」

「どうせ変なテーマソングだろう」

「変なテーマソングとは心外です」

テーマソングをルコに歌ってあげた。

めろ」

ルコにめろと言われてしまったので、仕方なく歌うのをめた。

「ふざけるな。やはり変なテーマソングだったじゃないか」

ルコは激昂して、私を激しく叱責した。

「罰として、私の同行を認めろ」

「罰って?どういう理屈ですか」

二人の言い争いは三時間ほど続いた。

「分かりました。今だけ同行を認めますが、直ぐに貴方を置き去りにして、逃亡しますよ」

結局カオリが根負けして、今だけ同行を認めた。

子供は元気だなと、カオリは思った。

「上等だ。置き去りにされる前に必ず口説き落としてみせる」

「変態さんには無理ですよ」

「変態って言うな」

「それから路銀は私が預かります」

「持ち逃げするなよ」

「そんなケチな真似しませんよ」

「分かるもんか。以前にも路銀を奪っただろう」

「何の事ですか」

二人の言い争いが再び開始された。


「お二人様ですね。二部屋になさいますか。それとも一部屋になさいますか」

「二部屋でお願いします」

「一部屋で良いだろう。金がもったいない」

「嫌ですよ。いくら子供でも、変態と一緒の部屋なんて」

「私は子供じゃない。それに変態って言うな」

「あの、どちらになさいますか」

「すみません。二部屋です」


「部屋が別だからって、逃げるなよ」

「逃げませんよ。安心して下さい」

二人は別々の部屋に入り、夕食まで休憩した。


夕食は宿屋で簡単に済ませたが、珍しく言い争いはしなかった。


「寝ているからって、逃げるなよ」

「しつこいですよ」

しかし部屋に戻る時は言い争いをした。


「これから殿下は大商人の御子息と名乗って下さい」

「どうしてそんな面倒な事をしなければならない」

「この国の者に他国の王子が無断で国内に滞在しているのがバレたら、外交問題になる可能性があるからです」

「分かった。しかしお前はどうするんだ」

「私はルコ様の護衛兼侍女と名乗ります」

「ルコ様か。新鮮で良いな」

ルコ様呼びが気に入ったみたいだ。


「この大型客船で遠方の国に向かいます」

「遠方の国って?定期的に結界を張り直すのに、帰国出来るのか」

「大丈夫です。前に言ったじゃないですか。遠隔操作で結界を張り直すって。それに転移のスキルを使用すれば、一瞬で帰国出来ます」

「・・・・・・それは反則だろう。いくら追跡しても無駄じゃないか」

「そうですよ。だから諦めて下さい」

「絶対に嫌だ」

「本当に強情ですね。そんなだと女性に嫌われますよ」

「知るか。お前以外の女性に嫌われても、一向に構わん」

「そうですか。ところで出航時間が近いですから、そろそろ乗船しますよ」

「分かった」

私達は大型客船に乗船した。

船旅は初めてなので、緊張してきた。


「船内で映画を上映していますよ。一緒に観ましょう」

「映画か。良いだろう」


「流石は人気のあるホラー映画です。結構スリルがあります」

「ぎゃあああ」

上映していたのはホラー映画だった。


「大丈夫ですか」

「・・・・・・」

ルコはホラー映画が苦手だったみたいだ。

普段は大人の振りをしていても、まだまだ子供ですね。

「仕方ないですね。気分が楽に(重く)なるテーマソングを歌って差し上げます」

「・・・・・・余計に気分が悪くなるから、絶対に何も歌うな」

何も歌うなと言われてしまった。


「まだ気分が悪いんですか」

「・・・・・・」

ルコが少ししか夕食を食べないので、心配で尋ねてみたが、無言で頷くだけだった。

「今日はもう休みましょう」

「・・・・・・」

休むよう促したが、やはり頷くだけだった。


「海賊だ」

「皆殺しにされる」

深夜に突然船内が騒がしくなった。

どうやら海賊が襲撃してきたみたいだ。

「ルコ様は絶対に部屋から出ないで下さい」

「お前はどうするんだ」

「勿論海賊を討伐します」

「馬鹿、危険だ」

「大丈夫ですよ。私は聖女です。海賊なんか一捻りですよ」

一瞬海賊にルコを始末させるという、考えが浮かんだが、直ぐに思いとどまった。


「有象無象が大勢居る。さてと始めますか」

【重力制御】

「舟が浮いている」

「そんな馬鹿な」

「どうして舟が浮くんだ」

重力制御のスキルを発動させて、海賊達を舟ごと空中に浮かせた。

そろそろ三百メートルほど浮かせたよね。

上空三百メートルほど浮かせたから、重力制御を解除した。

舟が自由落下して、海賊達は舟から投げ出された。

「死にたくない」

「助けてくれ」

「お願いします」

海賊達が助けてくれと懇願した。

「船長、どうします」

船員が船長に判断を仰いだ。

「予定通り航行するのが我々の最優先任務だ」

「分かりました。つまり放置しておくのですね」

「無視して、このまま進むんですね」

「賛成です」

船長や船員達は海賊達を放置する事に決めたみたいだ。

海賊なんか助ける価値や義理が無いと、判断したようだ。

それよりも予定通りに航行する事を優先した。

大型客船はそのまま目的地に向かう。

敵を全て倒すのは当然だし、私も放置には賛成なのだが、今回は助ける事にした。

【探知転移】

複数の相手を探知して、転移させる特殊なスキルで、通り過ぎた孤島に海賊達を転移させた。

【転移】

そして私も転移した。

【拘束】

「命が惜しかったら、アジトの場所を白状しなさい」

「「「・・・・・・」」」

海賊達を拘束して、アジトの場所を吐かせようとしたが、無言だった。

【重力制御】

再び重力制御で、空中に浮かせた。

めてくれ」

「降ろしてくれ」

「アジトを白状する」

【高速飛行】

高速飛行でアジトに向かい、海賊達の溜め込んだ宝を頂いた。

【転移】

そして大型客船に転移した。


予定通りに遠方の国の港町に到着した。

ようやく当初の目的を達成した。

後はルコの処遇だけだ。

祖国に送り返すか、置き去りにするか、始末するか、奴隷商人に売り飛ばすか、四つに一つだ。

送り返すのは面倒だし、置き去りにしても無駄だし、始末するのは少し気が引けるし、奴隷商人が見つかるか分からない。

どれも五十歩百歩で決め手に欠ける。

それに一人旅は退屈だから、結論を出すのは保留にした。

こうして一人旅が二人旅になった。


「殿下、見つけたわよ」

「アラレ、どうしてお前が此処に居るんだ」

「勿論殿下を連れ戻す為ですよ」

「殿下、このお方は何方どなたですか」

「この者は」

「貴女が殿下をたぶかしている、悪女カオリね」

「誑かす?悪女?私は殿下を誑かしていませんし、悪女でもありません」

「惚けるんじゃないわよ」

「惚けていません」

「カオリの言う通りだ。誑かしていているのは、むしろ私の方だ」

「殿下は黙っていて下さい。素直に白状しなさいよ。どうせ魅了のスキルでも使用したんでしょう」

「私は魅了のスキルなんか、有していません」

「貴女の言葉なんか信じられないわよ。貴女はいくつかのスキルを隠していたそうじゃないの」

「そ、それは」

「ほら、直ぐに反論出来ないじゃない」

「二人共、もうめろ」

三人の言い争いは一時間ほど続いた。


「アラレ、とにかく私は誑かされてなどいない」

「・・・・・・分かりました。但し確認の為に私も同行させてもらいます」

アラレは同行を条件に渋々納得した。

「勝手にしろ」

「今更なんですが、この方は何方どなたですか」

「本当に今更ね」

「この者は私の知り合いだ。名前はアラレ」

「アラレさんですか。可愛いお名前ですね」

「どこが可愛いんだ。荒くれ者の略だ」

「殿下、言い過ぎですよ」

「殿下、説明不足ですよ。私は殿下の婚約者です」

「婚約者?殿下には婚約者がられたのですか」

「違う。まだ婚約者候補だ」

「でも婚約者と名乗っても、間違いではありません」

「充分間違いだ」

「殿下、婚約者候補がられたのに、私にプロポーズしたのですか。結婚詐欺ではありませんか」

「殿下、カオリにプロポーズしたのですか」

「・・・・・・プロポーズした。しかし正式な婚約者は居ないのだから、結婚詐欺ではない」

「「完全に結婚詐欺です」」

ルコは二人に激しく叱責された。


「その婚約者候補のアラレさんがどうしてこんな遠方まで来られたのですか」

「先ほど殿下を連れ戻す為だと言ったじゃないの、聞いていなかったの」

「・・・・・・すみません。忘れていました。でもお一人でなんて危険ではありませんか」

「私は特殊な転移スキルを有しているのよ。だから危険は無いわよ」

「特殊な転移スキル?」

「私の転移は個人の波動を探知して、転移するのよ」

「・・・・・・凄い転移スキルですね」

「何が凄いんだ。つまりストーカーではないか」

「ストーカーだなんて、酷いですよ」

「事実だ」

「ストーカーはルコ様ではありませんか」

ルコが自分の事を棚に上げたので、釘を刺した。

「うるさい」

怒鳴ったが、ストーカーは否定しなかった。

「それでもお一人で来られるなんて、勇気があるのですね。その勇気を称えたいので、テーマソングを歌って差し上げます」

「テーマソング?面白そうね」

「歌うな」

ルコが制止したが、勇気を称えるテーマソングを歌った。

「なかなか良いテーマソングじゃないの。でも歌詞を少し変更した方がもっと良いテーマソングになるわよ」

アラレから変更点を説明された。

「それでは歌詞を変更して、再び歌います」

「絶対に歌うな」

ルコを無視して、再びテーマソングを歌った。

「素晴らしい」

「お褒め下さって、ありがとうございます」

「・・・・・・」

アラレは感動して、カオリは感謝して、ルコは絶句した。

「カオリとは意外と気が合いそうね」

「アラレさんとは仲良くなれそう」

「こいつら類友かよ」

三人は聞き取れないくらいの小声で呟いた。


「アラレさんは大商人の御令嬢であり、ルコ様の妹君と名乗って下さい」

「嫌よ。婚約者と名乗るわよ」

「駄目だ」

「婚約者でも構いません。これからはアラレ様とお呼びします」

ルコが反対したが、二対一の多数決で婚約者に決まった。


こうして二人旅が三人旅になった。

祖国に別れを告げるテーマソングは某宇宙戦◯ヤ◯トの替え歌です。

プロポーズを断るテーマソングは某機動◯士ガ◯ダムの替え歌です。

元気が出るテーマソングは某仮面◯イダーの替え歌です。

気が楽に(重く)なるテーマソングは某新◯紀エヴァン◯リオンの魂のル◯ランの替え歌です。

勇気を称えるテーマソングは某超時◯要塞マク◯スの替え歌です。

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