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弟以上恋人未満(末っ子2)  作者: 夏目 碧央
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戦々恐々の日々(レイジ目線)

 僕らは7人組のボーイズアイドルグループである。デビューして7年になる。うちの芸能事務所では、年上の人を「兄さん」と呼ぶ。俺はグループ内最年少なので、メンバーを○○兄さんと呼ぶ。

 二つ年上のテツヤ兄さんは、俺の想い人だ。テツヤ兄さんは人形よりも綺麗な顔をしているくせに、笑うとこの上なく可愛い。人一倍はしゃぐくせに、人一倍繊細で傷つきやすい。危なっかしくて放っておけない。だが、天然キャラでもあり、何を考えているのか全く読めない人だった。

 海外遠征に行った時、コンドミニアムの部屋で色々あって、テツヤ兄さんは俺にキスしてくれた。だが、それは「親友同士のキス」であり、「人工呼吸」並の出来事なのだった。テツヤ兄さんにとっては。

 それでも、俺はめげない。キスする事を許してもらったのだと解釈する。なので、時々「挨拶」と称してテツヤ兄さんにキスをする。

「レイジ、今日泊まりに行ってもいいか?」

そして今日もまた、テツヤ兄さんからこんなLINEが来る。他のメンバーが近くにいる中で。

「いいよ。」

見られたら終わりだ。特にリーダーのタケル兄さんに知られたら、どれだけオオゴトにされて怒られるか。いつも、

「お前らは仲良くし過ぎだ!ちょっと離れなさい!」

と言われる。そのくせ、自分はシン兄さんとしょっちゅう一緒に自撮り写真を撮っているのだった。タケル兄さんは絶対シン兄さんの事が好きなんだと思う。


 仕事が終わって帰宅すると、じきにテツヤ兄さんがやってきた。

「ふう、何とか巻いてきたよ。」

入って来るなりそんな事を言う。

「え?誰を?」

「カズキとマサト兄さんだよ。一緒に帰ろうって言われたからさ、ちょっとコンビニ寄るからって言って、こっちに来た。」

テツヤ兄さんはそう言って、ニッと笑う。

「えー?それじゃあ、マサト兄さんたち心配してるんじゃない?」

俺が言うと、

「大丈夫だよ。先に帰ってって言っておいたから。」

だそうだ。

「あ、そう。」

テツヤ兄さんは、ここに来る事をメンバーに内緒にしている。髪の香りでバレないようにと、自分専用のシャンプーをうちに置いているくらいだ。

「俺が泊まってるって知られたら、みんなしてここに泊まりたがるぞ。お前、俺を泊めてるのに、断れるのか?」

兄さんたちには「人を家に入れない主義」なんて言ったけど、冗談のつもりだったんだ。だからどうしてもと言われたら、別に泊めてもかまわないのだ。でも、テツヤ兄さんは他のメンバーがうちに泊まる事を断固阻止しようとしているのだった。

 テツヤ兄さんがサングラスを取り、マスクを外し、手を洗い、かぶっていたフードを外した。その瞬間に、俺はチュッとキスをした。

「うわっ!な、何だよ。」

テツヤ兄さんは目をまん丸くする。

「挨拶だよ。うちへようこそって。」

何でもないかのように言って、俺はさっと背を向ける。本当は、俺にとってはすごい事なのだが。今も心臓がバクバク言ってる。

「ああ、そうか。」

せっかくここまで進んだから、後退したくないんだ。だから、時々勇気を出してこういう事をする。これで嫌われないって分かったから。小ずるいかな、俺は。

 ちょっとしつこくすれば嫌がるだろう。それで嫌われたら・・・。俺は戦々恐々の日々を送っているのだ。


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