プロローグ
視線を上げれば、眩しいほど光を通す色鮮やかなガラス装飾。
視線を下げれば、顔が映りそうなほど研きあげられた大理石。
壁には金銀を惜しみ無く施したレリーフが並び、それらが中央の祭壇へと視線を誘う。
ここはアルトリア王国。
王宮の中心に位置した豪華絢爛たる大聖堂の中。
神の代理を兼ねた王の御前で今、永遠の愛を誓うのは――――――
汝、この者を妻とし、生涯愛し守ることを誓いますか?
「はい」
まず誓いを立てるのは、青みを帯びた黒髪の新郎。
いささか、夫としての義務を果たすには若すぎる齢に見える。
が、その背丈よりまだ長い青のベルベットをあしらった白貂の外套を羽織った肢体は威風堂々とした空気を纏っている。
では、汝、この者を夫とし、生涯愛し尽くすことを誓いますか?
彼と向かい合い、続いて誓いを立てるのは、月の光のごとく輝く金の髪、アウイナイトのように輝く青の瞳を持つ―――――
「オンギャアアア!!」
20年後とてつもない美女になるは想像に難くない――――――侍女に抱かれた赤子。
大聖堂をつんざく五月蝿い、もとい元気な泣き声が彼女の誓いとなった。
アレンブルク国王 ユリウス・アレンブルク 12歳。
アルトリア王国第3王女 マリアベール・アルトリア 0歳。
ここに婚姻が成立。
幼き夫婦が誕生した。