67 EVENT《LS》5
ミラは幸せだ。
沙耶ちゃんに抱きつき、すんすんと良い香りを嗅ぐ。はあ〜〜ん。
『ミラ、私のミラ・・・』
いい匂い〜。
沙耶ちゃんを独り占めだ。
『あの、ミラ?』
きゅっと締まったお腹が素敵。
女性なら憧れるよこれは。
さっすが沙耶ちゃん。心だけじゃなくて体も素晴らしいなんて。
「ミラ、聞きなさい」
いへっ、夢の中にいたら沙耶ちゃんにほっぺを摘まれた。何だろう、ごめんなさい。
「ファーストさんが話があるみたいよ?」
「何か用?」
少し冷たかったかも。
でもこれは沙耶ちゃんとの至福タイムに水を差したファーストさんが悪い。
『あの、ミラ。このままでは埒が開かないので足切りをお願いします』
「足切り?」
沙耶ちゃんに聞いてみた。
面倒くさそうな顔で教えてくれた。
「ええーとね、私と戦う実力の無い者を落として、50人以下にしなさいって事かな」
『その通りです!一文字沙耶。100ポイントを差し上げます』
うげっと沙耶ちゃんが嫌そうな顔をした。足切りかあ。そうだ!あれを使おう。
「分かった!」
重力スイッチを取り出す。
「ちょっとミラ、なんで家の鍵を出したの?」
☆☆
沙耶には分からなかったが、他の一文字の一族はピーンと来た。
「あれは、斬鉄様の死合で出そうとした魔道具ですよね?その後は家を浮かすのに転用したみたいですが・・・」
「果たしてどんな効果だったのだ?」
☆☆
カチリッと押すと、
浮かべるではなくて、逆の押さえつける方向へと動作をした。
「ぐあああああっ重力が」
「潰されるううう」
苦悶の表情を浮かべて、参加者達が跪き始めた。
暴力を会得して権力にあがらおうとした武人達の子供達は、魔道具から生み出される重力にひとしく屈した。
ひれ伏した。
中心にいる美少女を囲み、忠誠心とは無関係に跪きだす戦士見習い達。
「これは、もしかして浮力の逆の力?」
「さっすが沙耶ちゃん。重力だよ」
なんて聡明なんだろう。
素敵。
戸惑う沙耶ちゃんを前に、また一人また一人と他の参加者達が頭を垂れていく。ついには跪き、平伏する。
うんうん、沙耶ちゃんは偉大なのです。
「ミラやり過ぎ。早く止めて!」
「ええー?沙耶ちゃんの凄さを分からせないと。こいつら分かってないよ?」
沙耶ちゃんは凄いのです。
それをもっと広めたい。
ミラはスイッチを強にした。うへへ。
うん。ひれ伏しなさい。
沙耶王子の前に。
『よ、予選しゅーりょー!』
慌てるファーストの声が聞こえた。
残念っ。残ってるのは一人。
鎧の人。
やばっ、やり過ぎたかも。
『ええと、ミラ。指導参戦お疲れさまでした。2人しか残っていないため、次は決勝戦になります。決勝は、一文字沙耶と、プレートマンです。学園長、司会を』
ふわっと学園長が舞台に呼ばれて現れると、ミラを見てニッコリ一礼した。
沙耶ちゃんを恐る恐る見上げる。ごめんなさい。
痛っ。
怖い笑顔で軽くコツンと叩かれた。
「反省しなさいミラ」
「はーい」
なんて事ないやり取りだったのに、それを見ていた学園長が泣きながら膝をついた。
「くそう、俺の1万点が奪われた」
『なっ!?そういう事ですか、たしかに』
沙耶ちゃんが青ざめた顔になる。
「これは違うから、ただの挨拶っ!!だからノーカン」
ほへ?
『ルールを曲げる事など許しません。よって一文字沙耶に規定どおり10万点を差し上げます』
「違う、俺のを1万点を足して11万点だ、持ってけえええ」
「だから、違うののののーー」
おおっ、よく分からないけど。
「沙耶ちゃん凄い」
「いや、待って!ミラも待ちなさい!」
慌ててる沙耶ちゃんも可愛い。
うへへ。
『さて、2人しか残らなかったため、次は決勝になります。プレートマンから挨拶を』
スタッフが現れるとプレートマンに駆け寄った。しかし、なかなか返事が来ない。
ガパッと面が開けられると、そこには人が入っていなかった。
「中身はロストしてます」
スタッフさんの顔が引きつってる。
静まり返る会場。
『・・・・ラストスタンド。優勝は一文字沙耶っ!!!』
うおおおっさすが沙耶ちゃん。
力の限り拍手したのに、ミラだけの拍手が響く。
あれ?
もう!結果を受け入れられないなんて、駄目な大人ばかりだ。
優勝の沙耶ちゃんを讃えなさい。